Sweets Collection

□メガネ
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その日の授業も終わり放課後を迎えた塚佐は、時間を気にしながらいつものようにアルバイト先のケーキショップ・アンジェリカに急いでいた。

もう普段より三十分遅れている。
これも教室を出ようとしたところを級友の立松につかまり、先日の文化祭で恋人には間違いないが、成り行きとはいえ「彼女」と紹介したマイラバーについてあれこれ突っ込まれていたからだ。何とか誤魔化しつつ振り切って学校を後にしたが、この先も機会あらば聞いてくるだろう立松に、我が友ながら少々ウンザリもしていた。
そしてはっきりと質問に答えられない自分にもだったが。

「急がなくちゃ。理留さんもう店に行ってるかな」

その塚佐が理留と呼ぶ京野こそマイスイート。
同じ高校の一学年上、京野理留だった。
それも周囲には二人がつき合っていることは秘密。
知っているのは京野の姉とその夫でアンジェリカの店長で塚佐の師匠信川のみだ。

「だってオレが話したせいで『彼女』の正体ばれちゃ困るし。同性の恋人なんて、大っぴらに言えるもんじゃないし」

だからこそ立松に曖昧にしか答えられず、何かにつけ突っ込まれる要因を作っていた。

文化祭でなぜに「彼女」と紹介することになったかといえば、ちょっとした行き違いからケンカをしてしまい、思いつめてしまった京野が「自分に一番素直でいられる格好」と、つまり塚佐が「ミチル」と呼ぶところのプライベートの姿である女装をして、クラスにきたからだった。
これには心臓止まるかと思うほどおそろしく驚かされた。
すぐにクラスを離れようとしたが、そこに運悪く立松が来てしまい、おかげで紹介するはめになった。

女装をした京野は本当に女子にしか見えない。
塚佐も初めて会ったときは女の子だと思い、一世一代の勇気を振り絞って声をかけたものだった。
そんな京野に顔見知りであるはずの立松も気づくことはなく、塚佐の「彼女」と信じ込んだ。

「まったく理留さんって無茶するよな」

いくら女装が完璧とはいえ、あのときはさすがにばれずに済んでよかったと内心ほっと胸を撫で下ろした。

「そのくせ、オレと一緒にいるとこ見られるの嫌がるんだもんな、学校じゃ」

 
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