Sweets Collection

□ストロベリー
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ケーキショップ・アンジェリカ――そのスタッフルームで、ミチルは盛大に溜め息をついた。
目の前の事務机の上には、丸めれば掌におさまってしまうほどの小さな布製のものが一つ。

(姉さん、いったいこれをどうしろと……)

ミチルは机に肘をついて手を組むと、その上に顎を乗せた。

コトの起こりは三十分ほど前だった。
学校帰り、いつものように義兄が経営するこの店にアルバイトに来たミチルは、学ランから店の制服であるメイドチックなエプロンドレスに着替えた。
そのとき事務机の上にあったブティックバッグに気がついた。

実姉がまた買い物して置いておいてくれたのだと思った。
年の離れた姉はよくこうして、ミチルの着るものを買ってきてくれる。
服以外にもあれこれと、こちらが頼む前にいろいろとだ。羞恥が先に立ち、店頭で手に取ることも憚られてしまうアレとかソレとかも。
姉の気遣いは本当にありがたく、甘やかされていると弟はいつも感謝をしている。

中を確かめるとやはり服で、ミチルのお気に入りのブランドの新作だった。

それから――一緒に入っていた可愛いラッピングが施された小袋も、深く考えることなく中を見た。
けれどその中身がまさか。

ミチルは先ほどから悩ませているものを手に取った。そして広げる。

いったいコレは、何?

二等辺三角形を逆さにしたようなコレが「何か」など、難しく考えるまでもない。

細番手の糸で織られた白の綿ローン地に可愛らしくも赤い苺がプリントされ、三角形の二辺には小花の飾り刺繍の凝ったレースがギャザーたっぷりに取りつけられている。
もちろん手触りも柔らかく、綿だから通気性も吸湿性もいい。
体のデリケートな部分を覆うものとし最適だろう。
少々デザイン的に気になる部分はあるものの……。

小さな布製のものは間違いなく、どう見ても女性用の下着。
一般的にはショーツと呼ばれるパンツだ。
脇はヒモならぬサテンリボンで結ぶ仕様になっている。
結ぶようになっているのは、脇だけではなかったが……。

(これをぼくに着けろというんだろうか。そりゃ穿いてみたいとは思っていたけどさ。でもこれって……)

姉の意図が分からない。
冗談好きな性格だから、面白がってのことかもしれない。
 
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