AKB48U
□キスはダメよ
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「あぁ…緊張したなぁ」
名古屋へと帰る新幹線の車内で私はホッと胸を撫で下ろした。
今まで地方の番組ばかりで…
というかそれでも手汗が滲むくらい緊張しちゃうんだけど…
全国放送の番組出演は今までになく緊張した。
そんな緊張する私の手を珠理奈がずっと握っていてくれた。
『大丈夫だよ』
言葉にしなくてもそう笑いかけてくれてるみたいで…
すっごく緊張したけど、珠理奈が顔を見合わて笑ってくれて、私の緊張はだいぶ和らいで後半は頑張って話せたと思う。
「ちゅり〜ピザ美味しかったねぇ〜♪」
ニコニコと嬉しそうに笑う珠理奈。なんか尻尾が見える。
「あ、うん。そうだね」
「なごやからなごやかに来ました…イケると思ったんだけどなぁ…」
「いや、それはちょっと…」
珠理奈の親父みたいな駄洒落は正直イケてないし、寒い。
高野豆腐だよ。
「えぇ〜」
私の肩に頭を乗せて、ブーブーとつまらそうにその特徴的なアヒル口を可愛く尖らせる珠理奈。
「駄洒落禁止されちゃったもんね」
「さり気なく三回くらい言ったけどね♪」
何故かVサインでご満悦な珠理奈。
「ていうか、顔近過ぎだったよ…珠理奈」
「そう?」
「うん。今もね」
「むっ…そんなこと言う口はこうしてやるうぅ」
柔らかい唇の感触…
珠理奈の唇が私の唇と重なった。
前言撤回。
やっぱりこのアヒル口は可愛くない。エロいだね。
「んっ…ちょっと…珠理奈…」
「ちゅーしたそうな顔してた」
「してないよ」
「してた」
「してない」
「い〜や、してました」
「……はぁ…」
…でたよ。
珠理奈の『負けず嫌い』
こう言う時に反論しても無駄だってことは…充分分かってる。
「珠理奈がちゅーしたいだけじゃん」
「そうだよ」
ニコッと笑顔の珠理奈。
スーパー中学生…
……末恐ろしい。
思春期の中学生は欲望に忠実だね。
「…もっとしたい」
「だめ」
「やだ」
「それはこっちの台詞」
「えぇ〜…!?」
今度は拗ねだした。
大人っぽいとか言われるけど…まだ珠理奈は子供だ。
「もう…」
仕方ないなぁと溜め息を吐いて、珠理奈の耳に顔を寄せてこっそりと耳打ち。
「名古屋帰ったらね」
「…ちゅり…大好き」
「…うん、知ってる」
「だよねぇーそんなの当たり前田さん♪」
その後、またちゅーされて、珠理奈のブログに自慢気にドヤ顔を決めて私のほっぺにちゅーする画像が載るのは……
これから数時間後の話。
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