AKB48U

□Bye-Bye-Bye
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「愛する」


「愛される」



それって……



どう言うことだろう?


どう説明したらいいんだろう?



「愛される」ということは…



とても幸せなことだと思っていた。





「んっ…」



優しく長い指が私の頭を撫でる。



AKBは恋愛禁止…


チームも事務所もユニットも一緒で、選抜常連メンとキャプテンがキス…


フレンチとかそんな軽いキスなんかじゃない。



こんなことは許されない。


許される筈がない…


これは言うなれば不毛な関係…


…というものなんだと思う。




ここは禁断の、とか…


秘密の、とかの方が聞こえはいいかもしれない。


でも、これは不毛なんだ。


私とぱるさんの関係は…




お互いに過去の人への思いを忘れられないまま、ズルズルと引きずっている。



ぱるさんは麻里子様、私はあっちゃんを…



全てはぱるさんが…
麻里子様に告白してるのを目撃したことからだった。



ぱるさんは麻里子様に振られた。



麻里子様の心の中にあっちゃんという大きな存在があったから……その後、麻里子様とあっちゃんは付き合い始めた。



私は呆然と立ち尽くすぱるさんを抱き締めた。


ぱるさんはただ私を抱き締め返して「慰めて」と私の肩に顔を埋めて泣いた。



それから…この不毛な関係は続いちゃっている。



同じユニットのみぃちゃんも、薄々というか…


もう気付いてると思う。





こんな私達を…みぃちゃんはどう思ってるのだろう…?


仕事終わり。
みぃちゃんが久しぶりに家に泊まることになった。


私の部屋に入って早々にみぃちゃんは部屋を見渡して、相変わらずだねなんて苦笑した。



相変わらず…とは私の部屋のこと。


私は男装似合ってるとか、男疑惑があるけど…ピンクが大好きで、ここは姫部屋と呼んでいる。



みぃちゃんは荷物をおろすと、棚に並べられた漫画を2、3冊程取り、私のベッドに寝転がった。



「これ読みたかったんだなぁ〜」



ふにゃりと柔らかい笑みが零れる。


最近みぃちゃんの笑顔を私は見てなかったから、久しぶりに見るみぃちゃんの笑顔に私は安心した。


私も本屋から買ってきた漫画を袋から出し、読み始めた。



2人して漫画とか…どうなんだろう?


友達なくすかな…?


まあ、高橋はみんながいるからいいんだけど…



「あ…たかみなさぁ…」


「なぁん?」


「あっちゃんのこと好き…?」


「ふぇ!?えっ…なに?いきなり…」



相変わらず、漫画に視線を落としたままのみぃちゃん。



あっちゃんという名前だけで、私は反応してしまうのに…

「好き」という二文字の言葉に私はドキッとしてしまった。


「いいから」


「す、好きだよ…」



顔が熱くて、私の体温はどんどん上昇していく。



「ふーん…にゃんにゃんは…?」



「…好き」



「じゃぁ、にゃんにゃんとあっちゃん…どっちが好き?」






「え?」



「答えて」



タラリと冷や汗が垂れる。
ギュッとベットのシーツを握り締めた。



「どっちも…」


「そう言うのはナシね」


「うっ…」



そんなこと言われても…


どっちも好きで大切で…



「たかみなはあっちゃんのこと内心諦めてるんだよ」



「え…?」



「幸せそうな2人を見て、私は引かなきゃ…そう思ってる」


「……」


「だから、にゃんにゃんがかわいそうだ…にゃんにゃんの気持ちを分かってあげるのは…私しかいない…」


「それは…」



「そうでしょ…?」



何もかも分かってます。
みぃちゃんの顔にそう書いてあった。複雑そうな綺麗な黒目が揺れる。



「そんなんじゃ…」


「一緒に乗った舟、漕ぎ出したらもうそこで行き先は決まってるの。もう…たかみなは選んでるんだよ」


「選んでる…」


「うん。だから…今更、私がその舟に乗ろうとしても…船員オーバーなの。舟は2人乗りだから。私が入るスペースなんてないの…」



「え、それ…どう言う…」



悲しそうな顔をして小さく呟かれた言葉に俯いていた顔を上げたら、みぃちゃんは荷物を持ち立ち上がっていた。



「…帰るね。気分変わっちゃった…」



そう呟くみぃちゃんの顔は長い髪で見えない。



「にゃんにゃん、外で待ってるよ。私が呼び出しておいたの」



「え?」



みぃちゃんの言葉に私はバッとカーテンを開いた。



外を見ると、寒そうにかじかむ手を吐く息で温めているぱるさんが家の前に立っていた。



「もう、この関係を終わらしたいんだって。ちゃんとたかみなと向き合いたいって…最初から…ううん…これは私が言う台詞じゃないね…」


「みぃちゃん…!」



みぃちゃんは首を横に振り、じゃあねと手を振って部屋から出て行ってしまった。



タイミング良く、私の携帯が鳴る。



私は携帯に手を伸ばして、受話器ボタンを押した。




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