AKB48U

□雪、ときどき由紀。
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「あ、雪だ」

「ホントだぁ〜すごいっ」


帰り道。
さえちゃんは空を見上げて笑った。

繋いだ手と2人で巻いたマフラーが温かい。


「ゆきりんだ」

「ん〜?」

「ゆきりんがいっぱいいるよ〜」

「あ、そっちか」


雪にはしゃぐさえちゃん。
雪かぁ…私が産まれ育った場所は雪なんてめったに降らない。

けれど今年は二回振り、積もったそう。


「そう言えば…帰ってないなぁ」


「なにが?」


「鹿児島」


「あ、そっかぁ。りんちゃん鹿児島だったね」


「うん」


去年仕事で帰った以来、帰郷していない。


プライベートでは帰ったことがない。

遠いこともあるけど、まとまった休みが取れない上に…
取れても家でゴロゴロして終わちゃうし…


「りんちゃんの住むとこは雪なんて降らないよね?」


「うん。全然ッ」


「そっかぁ…さえも鹿児島行ってみたいなぁ〜」


「え?ホント?」


「うん!」


さえちゃんと帰れたら嬉しいなぁ。

マネージャーさんにだいぶ前から言っておかないとダメだけど。


微笑むさえちゃんの鼻は寒さで赤くなっていた。

吐く息が白い。


「ゆきりんがいっぱいで嬉しいなぁ♪」
さえちゃんは機嫌がいいのか鼻歌を歌いながら歩く。


「そう?」


「うん♪」


ギュッと繋いだ手が恋人繋ぎになる。さえちゃんの大きな指が絡まる。


身長変わらないのになんでこんなにさえちゃんの手、おっきいんだろ…?

やっぱり、バスケかなぁ?


さえちゃんの手、冷たくて気持ちいいから好き。


私の大好きな手。


「さえちゃんは雪、好き?」


「うん、好きだよー綺麗だしっ」


「そっかぁ」


「あ、でも…」


「ん?」


さえちゃんはニッコリと笑って、私にコッソリと耳打ちする。


「雪は雪でも柏木由紀ちゃんのが好きだけどね」


そう甘く囁いて、さえちゃんは恥ずかしそうに鼻をすすり笑った。


「さえちゃん…」


「ん?」


「今日うち来る?」


さえちゃんの顔を覗き込んで微笑む。


「え?いいの!?あのはーちゃんでさえも入れなかったのに…さえが入ってもいいの!?あ、ダジャレになっちゃった」


「うん。さえちゃんだからね!それにお母さんにさえちゃん紹介したいし…」


「うわっ、マジでぇ!?今日思いっきりドブスファッションなんだけど!」


「あははっ」


格好なんてなんでもいいんだよ。

ファッションはドブスでも、さえちゃんの中身はモテだから大丈夫だよ。


「きっとお母さんもさえちゃん気にいってくれると思うの」


だって、親子だし。
私がさえちゃん好きならお母さんもきっとさえちゃんを気にいってくれると思う。


私のお母さんだしね。


「へへっ、そっかぁ。楽しみだなぁ〜あいうぉんちゅ〜♪」


「あいにじゅ〜♪」


「りんちゃんあいらびゅ〜♪」

「あはは、無理矢理じゃん〜」


「なぁんだよぉ〜嬉しい癖にぃ」


「うん」


嬉しいよ。
さえちゃんに会えて私は雪のようにさえちゃんへの思いを積もらせて、思いがどんどん溶けて、さえちゃんに溢れていく。


「さえちゃん?」


「なに?りんちゃん?」


「好きだよ」


「さえもりんちゃんが大好きだよ」


「私もさえちゃんのこと…だいっだいっ…だぁ〜い好きだもんっ」


「なにをぅ〜!?」


なんて付き合いたてのバカップルみたいな会話をしながら家路を2人、仲良く手を繋いで帰った。



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