AKB48
□A2
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例えば、この地球上に自分より大切だと思える人なんているのだろうか?
例えば、今日とんでもないことが起きるとしたら…
それはそれで楽しそうだな、なんて思う。
暇を持て余した高橋みなみ。
18歳。女子高生。
現在彼氏募集中。
「桜の花はー別れのしおりー♪」
補助鞄を背中に背負って、白線の上だけを踏んで歩く。
小学校によくやったなぁなんて思いながら、私は白線の上を進んでいく。
「あ…」
ずっと白線を見ていた私の目に、何かが移り、お気に入りのハイカットの赤のスニーカーに何か当たった。
「へ…?」
手、腕、頭…。
疲れてるのかな?
ともう一度、私は目を凝らしてよく見てみた。
「ひっ…!?」
それは明らかに人で、うつ伏せに倒れたままの人に私は短く悲鳴を上げる。
「し、し、しっ…死んでる?」
恐る恐る近付いて、人差し指でツンツンと肩あたりを突っついてみる。いや、虫じゃないんだから。
「おーい?大丈夫ですかぁ?」
肩を掴んで軽く揺すってみる。
反応はない。
ピクリとも動かない。
「ま、マジで?死んでる…?」
とすれば、私が第一発見者?
やべぇ、触れちったよ!?
ガタガタと震えていると、ポンと後ろから肩を叩かれた。
「ひゃっ!?」
ビクッと身体が強張る。
ぎこちない動きで後ろを振り向くと、そこには見知った姿があった。
「何してんの?」
「ゆうこおぉー」
「うおっ!?」
黒のスウェットにコンビニ袋を下げ、紙パックのリプトンをストローで啜りながら呑気な顔をしている友人の肩に私はすがりついた。
「ど、ど、ど…どうしよ!?」
「取り敢えず、落ち着け」
「んっー…」
差し出されたストローで紅茶を飲む。その後、大きく深呼吸。
「ひ、人が…」
「ん?」
チラリとゆうこは倒れている女の子を見る。そして、交互に私を見て、一言。
「ヤンキー…ついにやっちまったか…」
「見た目ヤンキーなだけだからっ」
「へぇー、取り敢えず通報しとくから。出頭しなよ」
人が死んでるのになんでこの人冷静なの!?
って私は第一発見者なだけで、私はやってないから!
「あ、もしもしー?」
「ぎゃっー」
「冗談だよ。取り敢えず、まりちゃんに電話するだけ」
「…なぁんだよ。驚かせんなよな…」
胸に手を当てて、ため息を付いた私にとんでもないことが起きた。
やっぱり、それはそれで良くないと思った。高橋みなみ。18歳。現在事件に巻き込まれ中。
プシュー
死んだと思われて
いた人の背中が白い煙を出して、パカッと開いた。
その背中はまるで翼を広げた蝶のよう形をしていて、その内部は赤や青の導線や、金属が顔を覗かせていた。
「ま…マジかよ…」
これには流石のゆうこも信じられないというように驚いている。
つまり、私が見つけたのは人ではなく、ロボット。
人じゃなくて良かったけど、これもこれで凄いことなんじゃないかなって思う。
「あ?もしもし?なんか背中が開いたんだけど…あ、うん。うん。わかった」
ゆうこは頷くと、携帯を切った。やっぱり冷静ですね…。
「連れてこいってまりちゃんが」
「わっつ!?」
まさか、これが私の運命を変える出来事なんて誰が予想しただろう?
きっと神様しか予想出来なかったと思う。
これが私とA2の出逢いだった。