その他
□My Song
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死んだ世界でも音楽が出来る私達はきっと幸せなんだと思う。
「岩沢、新曲できたのか?」
夕日の光が射して、部屋はオレンジに染まっている。
アコギを弾きながら、口ずさむ岩沢に私は話し掛けた。
「うん。でもこれは陽動には向かないかもな」
岩沢から歌詞の書かれた紙を受け取り、そこに書かれたタイトルを声に出して読んだ。
「…My Song」
「ああ…バラードだけど」
「バラード…」
岩沢はそう言うと、またギターの弦をピックで弾き出し始めた。
「なんでまたバラードなんだ?」
「さあ?ただ、私が歌いからだと思う」
私の歌か…
「岩沢はここで歌が歌えて幸せなのか?」
「うん。幸せだよ」
好きな歌が歌えなかった。
そう岩沢は言った。好きな歌が歌えて、音楽が出来ることは例え死後の世界でも幸せなんだろう。
私も岩沢とバンドが出来て嬉しい。
「岩沢…」
「ん?」
「これからもバンドやろうな」
「ああ…やろうな。ひさ子」
後ろから岩沢の背中を抱き締めた。あったかい。
こんなにもあったかいのに、私達は死んでるんだ。
幸せってなんだろう。
愛する人がいて、歌が歌えて、音楽が出来て…これ以上の
幸せはないだろう。
岩沢がいてくれればそれで…