けいおん!!!

□今夜、あなたの心を盗みに行きます。
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「きゃあああー」

「どうした紬!?」

「お父様…それが…こんなものが…」

「こ、これは…怪盗ギー!?」

明晩貴殿の家宝である宝石を頂きに参ります。そして美しい御令嬢も我が手中に収めてみせましょう。

いかなる警護もご自由になされるとよろしい。私を阻む事等できないのですから。

怪盗ギー


「先生、依頼です」

「今日は何の依頼かな?憂ちゃん」

彼女は秋山澪。
秋山探偵事務所の探偵だ。
そして、その有能な部下は平沢憂。澪の助手だ。

「はい、琴吹家の依頼で最近噂の怪盗ギーから予告があったそうです」

「怪盗ギーか…」

今世間を騒がしている怪盗の名前を知らない人はいない。
それ程の大物が名家の琴吹家を…。

「先生、刑事には」

「あいつも動いているさ。奴らはハイエナだからな」


「真鍋司令官!怪盗ギーから挑戦状が届きました!」

「ええ、存じているわ。律刑事。あなたの出番よ」

「今度こそ捕まえてみせますよ!怪盗ギーを!」

田井中律。
彼女は怪盗ギーを追う新人の刑事だ。

「あ…」

「よっ」

そして澪と律は親友である。
2人は久しぶりにこの事件で顔を合わせることになった。

「…予告状には
琴吹家御令嬢である「紬さん」と「宝石」を奪うとあったのですね」

「ああ、そして今夜がその予告していた日…」

「大丈夫です。「探偵」の名にかけて紬さんと宝石も守ってみせますよ」

「我々警察の方も厳重体制を取ります」

「うむ、頼もしい限りだ」

ガチャ

「秋山先生。全ての部屋の確認が終わりました」

「御苦労だったね、憂ちゃん。外の方はどうだ?」

「ええ、そちらの方も今しがた確認しにいく所です」

「ははっ、実に頼もしいな」

「しかし、相手は怪盗ギー。その美しい容姿で美しい御婦人を魅力し攫い、人間剥製にするという恐ろしい噂まである…」

「まあ…」

「憂ちゃん。申し訳ないが、もう一度屋敷周辺を見マワって来てくれ」

「分かりました」

「しかし、奴も欲張りですね。2つのものを盗むなど…」

「それが怪盗たるところだろ」
「私は部屋で少し休ませて貰いますね」

「では、警備を付けます」

「ええ…頼みます」

そして、予告時間まであと一時間。

「律…」

「ん?」

「久しぶりだな」

「ああ…まさかこんなことで再会するなんてな」

「もっとマシな再会をしたかったよ」

パーンッ

「きゃああああ」


銃声と共に叫び声が屋敷内に響いた。

「なんだ今の銃声は…!?」


「大変です、先生!紬さんが怪盗ギーに連れ去られました!」

「何!?」

「ちっ…あの馬鹿共!!」

「行くぞ、律!」

ジリン ジリン

ジリン ジリン

その時、電話が鳴り響いた。

『やあ、秋山くんだね?怪盗ギーだよ』

「貴様!?紬さんをどこにやった?」

『この美しい御令嬢は剥製にして私のコレクションとしていただくことにしたよ。流石に君達の厳重な警戒に宝石は頂けなかったけどね』

「紬さんを返せ」

『大丈夫だよ。傷つけないよ。久しぶりの美しい人間剥製が造れそうだからし』

「くっ…」

『…でも、私の交換条件をのむと言うなら話は別だよ。今から言う屋敷にそこのハイエナさんと共に来て』

「場所は…」

澪は指定されていた屋敷の住所を素早くメモを取る。

『では、屋敷で待っているよ』

ガチャン

「律…」

「ああ、分かってるさ」

「なら、行くぞ」

「おう!」

澪と律は2人で怪盗ギーに指定された屋敷に辿り着いた。
勿論、律は単独行動だ。

2人はアイコンタクトを取ると、屋敷のドアを開いた。

「怪盗ギー!どこだ!?」


「どこにいる!!」

2人は広い屋敷の中を見渡す。
大きなシャンデリアに肖像画、彫刻…

「…盗んだものだな」

中には数千万するものまである。

「よく来てくれたね。ようこそ、我が屋敷へ」

「秋山さん!刑事さん!」

「紬さん…!」

「その汚い手を離せ!」

律の銃口が怪盗ギーに向けられる。

黒いマントに身を包み、シルクハットを被った怪盗ギーはにやりと怪しく微笑んだ。

「2人ともよく来てくれたね」

「…紬さんを離して貰おうか」

「いいよ?私の目的は君達だからね」

「何!?」

怪盗ギーに銃を向けたまま威嚇する律。

「平沢憂。憂は私の妹だよ」

「なっ…まさか憂ちゃんが!?」

「そう。御令嬢を誘拐させたのは憂だよ」

「貴様ッ!!」

「うふふ…まあそう怒らないでよ。妹は澪ちゃんのことが好きみたいでね。協力してくれたよ」

「卑怯な…」

「それが怪盗ギー。いや、平沢唯のやり方なの」

「くっ…」

澪は下唇を噛み締める。
唯はクスッと笑い、澪の頬を撫でた。

「綺麗だね…澪ちゃん」

ボソッと唯は澪の耳元で呟く。

ガウンッ

その途端、律が構えていた銃口が火を噴いた。


「危ない危ない」

「澪に手を出すなッ!!」

「もーりっちゃんは短気だなぁ。短気は損気だよ?」

唯は澪から離れるとやれやれと肩をすくめて、ため息を吐く。

「うるさいッ…」

「ふふっ。仕方ない。今回は2人の友情に免じて諦めるよ。でもまた逢う時が来たら…」

「唯様、お時間です」

スッと全身黒で統一された少女が現れる。

「そうだね、あずにゃん。ここはもうバレてしまったし」

「用意は出来てます」

「ご苦労様…」

「ま、待てッ!」

「じゃ、またねー」

ガシャーン

唯とその少女は窓ガラスを割って、外へと落ちていた。

「なっ!?」

「…律」

「澪…?」

下を俯いた澪が律に呟く。

「どうやら、私は怪盗ギーにしてやられたようだよ」

「み、澪…?」


その後、探偵秋山澪と刑事田井中律は怪盗ギー平沢唯を捕まえるため、コンビを組むことになる。

唯は2人の心を盗んでいったのだ。

怪盗ギー。
その名は全世界に知れ渡ることになる。

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