けいおん!!!

□リツプラス+
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澪「律…律…」

薄暗い部屋で布団にくるまりながら私は1人…ゲーム機の中の美少女の名前を呼ぶ。

画面の向こう側の彼女の名前はタイナカリツ。
実はこの名前は実在する。

田井中律。
小学生から一緒で家も近い。
けれど、私は彼女とまともに話したことなどなかった。

太陽みたいな田井中さんと私では住む場所が違う。私はそう思っていた。

「あ、日付が変わった…」

ゲーム機の中のデジタル時計が4月7日に変わる。

「入学式…」

カレンダーには赤丸で囲まれ、『7』の文字の下にはそう書かれていた。

今日は桜ヶ丘女子高校の入学式。

私は晴れて、新一年生になる。

私は期待に胸を膨らませ、桜高に入学した。

…と言うのに入学してから何日か経った。

恥ずかしがり屋な私はなかなか友達に話し掛けられなくて、友達の1人もいなかった。

「秋山さん!」

せめて、私は共通の趣味を持つ友達を作ろうと文芸部に入ろうと職員室に向かっていた矢先に私は憧れの田井中さんに声を掛けられた。

「た、た…た…田井中さん!」

「秋山さんだよね?」

ひょいっと私の顔を覗き込む田井中さん。あ、憧れの田井中さんがこんなに近くに…!

私の顔はみ
るみる内に赤くなっていく。

「う…うう、うん」

相変わらず私のドモリは更に酷くなっていく。何てことだ。

「秋山さんクラブ見学見に行かない?」

「く、く、クラブ見学?」

田井中さんはニッコリと微笑んで、私に顔を近付ける。

「軽音部だよ軽音部!」

「でもわわわ私、ぶぶ文芸部に入るつもりだだし…」

「文芸部ぅ?」

「にに入部届かか書いたし」

入部届を田井中さんに見せると田井中さんは入部届を私の手から奪うと、勢い良く二つに破った。

「あ…あぁ…」

何するんだよと言おうとしたけど、私の舌は上手く回らずに舌を思いっきり噛んだ。

「軽音部に一緒に入ろう!」

ギュッと私の手を取って、両手で握る田井中さん。

「え、あ…」

私は強引に田井中さんの手を引かれ、職員室へ向かった。



「……へ?」

はぁはぁ…田井中さんってこんな強引な人だったけ?と思いながら荒い息を整える。

「廃部した?」

「正確には廃部寸前ね」

ざ、ざまぁ!
現実はそう上手く行かないのさ。

「昨年度までいた部員はみんな卒業しちゃって、今月中に4人入部しないと廃部になっちゃうの」

「先生ー」

「ごめんね、呼んでるから。
がんばってね軽音部」

「……」

「き、きれい先生だったー…」
廃部なら仕方ないよね
私は文芸部に…

そろり

むんず

「誰もいないってことは今入部すれば私が部長…ふふ……悪くないわね」

「あのーー…」

ザ 沢庵!

「見学したいんですけど…」

ガッ

「軽音部の!?」

「いえ、合唱部の…」

「軽音部に入りませんか?今部員が少なくて…」

「あ、あの…そんな強引に勧誘したら迷惑だ、だろ」

ずるずる

「それじゃ、私も行くから…」

「澪っ!!」

「あのときの約束は嘘だったのか!?」

「え?」

「私がドラムで澪がベースでずっとバンド組もうって!!」

「り、律さん…」

「それでプロになったらギャラは7:3ねって」

「ギャラおろかその約束が嘘です」

「ぷっ…くすくす…」

「ん?」

「なんだか楽しそうですね。キーボードくらいしかできませんけど、私でよければ入部させて下さい」

「ありがとーっ!!これであと一人入部すればっ!!」

「…私ももう人数に入ってるのね…」

でも、まぁいいか。

これからはリア充なんだから。

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