けいおん!!!
□10年前の約束。
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10年前の約束。
きっと、和ちゃんにとっては、しつこい私に言った冗談なのかもしれない。
でも、あの時の約束を
まだ私は覚えているよ。
「暇ー」
「そう。なら、少し黙っていて」
私、平沢愛の愛しい恋人はレコード会社に勤務しています。
今日は学校もないので、和ちゃんの仕事を見に来てるんだけど…
「ここはこうした方がいいかしら…」
当の本人は全く私に構ってくれません。放置プレイって奴ですか?私は今絶賛放置プレイなのでしょうか?教えて工口い人!
「和ちゃん好き」
「…はいはい」
「大好き」
「…知ってるわよ」
書類に目を通したまま頷く和ちゃん。
「約束は?」
「約束…?」
「うん、約束」
「何の?」
やっと目を合わせたらと思ったら、この天然さんめ。可愛い子ちゃんめ。
「や!く!そ!く!」
「だから何の」
「私が16になったら付き合ってくれるって…」
「……」
「…約束」
「ああ、あれね…」
「もう、私、16だよ!結婚出来ちゃうんだよ?」
「そうね、でもまだ未成年だわ」
「そんなのすぐ成人するもん!結婚すれば成人扱いされるし」
「そうね」
「和ちゃんは私に彼氏
出来たり、結婚したらどうすんの!」
和ちゃんが余りにも冷静に返すから、私はついムキになって言ってしまった。
和ちゃんは作業をしていた手を止めて、目を丸くしている。
「私だって思春期だし…1人や2人くらいいても可笑しくないんだよ?」
「それもそうね」
「…和ちゃんの馬鹿ッ」
顔が熱い。イライラする。
視界がぼやける。
和ちゃんは何も分かってない。
私はずっと和ちゃんだけを見てて、彼氏なんか出来たことない。
私が子供だから…和ちゃんは冗談だと思って、相手にしないんだ。
勢い良く立ち上がり、部屋から出ようとした時、和ちゃんの手が私の腕を掴んだ。
「待ちなさい、愛」
「離して!離してよッ…」
「全く…」
「のどかちゃ…ん…!?」
引き寄せられた私の身体は和ちゃんの胸の中にすっぽり収まった。
「私は冗談は言っても嘘は付かないわ…」
「でも…」
「そうね、付き合うのは成人してからと思っていたのだけど…私が我慢出来なかったみたい」
「和ちゃん…」
「私は愛から見たらおばさんだもの。そんなおばさんに飽きが来て彼氏作って結婚しちゃうんだって考えたら…それは嫌だなって」
和ちゃんの匂い。す
ごい落ち着く。
抱き締められるのは久しぶりだった。年が経てば恥じらいも覚えるし、最近和ちゃん仕事ばっかりだったし。
「飽きがくることなんてないよ…和ちゃんは綺麗だよ。綺麗なお姉さん好きだよ」
「ありがとう。こんな私だけど付き合ってくれるかしら?結婚前提で」
ああ、照れた和ちゃんも可愛い。イケメン。惚れる。
もう惚れてるけど…。
「うん!大好きだよ!」
和ちゃんは子供の約束を覚えててくれる私の愛しい人なのだから。