二の篭(バルヴァン文)

□Junk Box
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*微エロです。閲覧注意!



 ■ 優しく愛して・・・ ■



きゅっとシャワーの元栓を閉めて、バルフレアは濡れた髪をかき上げた。
久しぶりの宿で、ゆっくりと熱いシャワーを浴び、野営の疲れと汚れを洗い流すのは心地よかった。
バルフレアはざっとタオルで身体を拭くと、まだ汗のひかない身体に宿の備え付けのバスローブを羽織った。そして、さっぱりとした気分で浴室を出た。
だが、ドアを開けて目に映った光景にたちまち眉をしかめた。


床に乱雑に散らばった自分の服。
はらりと落ちたバスタオル。
そして、バルフレアと同じ宿のバスローブをかろうじて下半身にひっかけた状態で、床に倒れているヴァン。


バルフレアは、先程の自分の暴走ぶりに頭を掻きながら、ヴァンに歩み寄った。
ヴァンは床にうつ伏せに倒れたまま、ぴくりとも動かない。バルフレアは、ちょんちょんと足先で、そんなヴァンの肩をつついた。
「ん・・・。」
微かにうめいて、ヴァンは身じろぎした。その様子に、バルフレアは足先に力をこめて更に強くヴァンの肩をつついた。
「ほら、起きろ。ヴァン。風邪ひくぞ。」
「ん、・・・わかっ・・てる。」
ヴァンは床に手をついて、上半身を起こそうとした。
だが、力が入らずにバタリと床にまた突っ伏してしまった。そんなヴァンを見ながら、バルフレアは苦笑いをした。



一週間の野営の旅を続けた後、この宿屋に辿り着いたのは二時間ほど前。
一人部屋が二つと二人部屋が二つしか空いていないと言う宿の主人に、一行は王家主従に一人部屋を差し出した。残りは当然、パンネロとフラン、ヴァンとバルフレアの組み合わせで、さっそく部屋に行こうとする所をバルフレアはバッシュに呼び止められた。

強行軍が続いたので、今日はこのまま解散としたい。食事も全員一緒でなく、各部屋ごとに済ますことにしよう。だが、もし君がいつものように酒場に行ってヴァンを一人にするのなら、(できるならそんな事はしてほしくはないのだが)ヴァンの面倒は私がみるので、私の部屋に行くように言ってほしい。
ヴァンのことだから、初めて訪れる町で物珍しさに惹かれて、また何かトラブルに巻き込まれるといけない。
君も疲れているだろうが、年上なのだからヴァンの面倒をきちんと見てほしい。

バルフレアがそのバッシュの過保護すぎる要望を聞かされている間に、ヴァンはさっさと割り当てられた部屋へ行ってしまった。
そして、くどいほどバッシュに念を押された後で解放され、やっとバルフレアが部屋のドアを開けると、ヴァンは既にシャワーを浴びてさっぱりとした顔で出迎えた。
「遅かったな、バルフレア。」
バスローブに着替え、すっかりくつろいだ様子で無邪気に笑いかけられて、バルフレアはプチンとキレた。
旅の疲れと先程のバッシュの依頼への不満が、簡単にバルフレアの怒りに火をつけた。
「誰のせいだ!のんきに先に風呂入りやがって!」
バルフレアは、ヴァンのバスローブの胸倉をつかんで、そう文句を言った。
だが、目の前に引き寄せたヴァンからは、温かな風呂上りの良い香りがして、バルフレアの鼻を甘くくすぐった。
洗い立てのプラチナ・ブロンドは輝くような色艶で、薄く上気した頬はまるで瑞々しい桃のようだ。淡く色づいた唇は濡れて光り、頬に当たる息は湿って温かかった。
バルフレアは、そのまま噛み付くようにその唇に口付けた。
「ん、なにっ・・・。」
ヴァンは驚いて抵抗したが、バルフレアは構わず抱き締めた。抱きすくめたヴァンからは、しっとりとした肌の温もりが伝わってきた。手を差し入れた髪の地肌は温かく、絡めた舌を濡らす唾液は糖蜜のように甘かった。
その感触に、あっという間に理性が吹き飛んだ。
気がつけば、バルフレアはヴァンを床に押し倒していた。
風呂上りで上気したヴァンの身体は、バルフレアの愛撫ですぐに甘く溶けた。
床の上で好き放題ヴァンの身体を貪り、バルフレアは満足して身体を起こした。そして酷い有様で床に倒れたヴァンを放置して、自分はシャワーを浴びるために浴室へ向かったのだった。



「何やってるんだ。ほら。」
自分のせいだというのにバルフレアは横柄に言うと、ヴァンの側にしゃがみこんで手を差し伸べた。
「も、さい・・・あく。」
口の中でごもごも文句を言いながら、ヴァンはバルフレアの手につかまってようやく身体を起こした。そして、なんとか床に座ると、はふと溜め息を付いた。
何もつけていないヴァンの上半身には、赤い鬱血痕が無数に付けられていた。そして、気だるげなヴァンの身体には、しどけない色香が漂っていた。
「いつまでもそんな格好でいると、また襲うぞ。」
ヴァンの耳を引っ張りながらバルフレアが笑って言うと、ヴァンはビクリと肩を揺らした。
「か、勘弁してよ、もう。」
本気でびびりながら、ヴァンはバスタオルをつかんで身体に巻きつけた。
バルフレアは楽しげに笑うと、ヴァンの髪をくしゃりと撫でて立ち上がった。
「早くシャワー浴びて来い。」
そう言って、バルフレアは冷蔵庫からビールを取り出した。栓を抜いて乾いた喉に流し込めば、きつめの炭酸が心地よく喉を刺激した。
「なんだよ、もう・・・。本当に、勝手なヤツ。」
ヴァンはぶつぶつ文句を言いながら立ち上がると、よろよろと浴室に向かった。
その後ろ姿に、バルフレアはにやりと笑みを浮べて言った。
「今日は、お前の面倒を見るようにバッシュに言いつけられたからな。しっかり見てやるから、覚悟しろよ。」


すると、ヴァンはぎくりとして浴室のドアに手をかけたまま振り返った。
少し恨めしそうな目つきでバルフレアを見返したが、自分とは正反対の楽しげなバルフレアの表情に、諦めたように溜め息をひとつ付いた。
「じゃあ、・・・今度は優しくしろよな。」
頬を赤く染めてヴァンは早口でそう言うと、逃げるように浴室に駆け込んでドアを閉めた。
バルフレアは、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにくつくつと可笑しそうに笑い出した。
そして、ビールを飲みながら楽しげにつぶやいた。
「了解。」
浴室からはシャワーの音が響いてきて、バルフレアはその音が止むのを上機嫌で待った。



〜FIN〜


(2011/12/4)

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