二の篭(バルヴァン文)

□バルヴァン中くらいの話
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一体いつからバルフレアと身体を重ねるようになったのか、正直ヴァンは覚えてなかった。
更に言うなら、どうして男同士こんな関係になったのかも、ヴァンには解らなかった。
あえて理由をつけるなら、ヴァンにとってバルフレアは憧れの空賊であり、純粋に好きだからだった。
それに、バルフレアとの行為は気持ちが良かった。
甘いキスも、熱い抱擁も、すべてが初めての経験であるヴァンには刺激的で、その若い身体はすぐに快感を覚えてしまった。



 ■ 溺れる二人 ■





「う〜ん・・・。」
ヴァンは一つ伸びをして汗ばんだ身体を起こすと、ゆっくりとベッドから降りた。激しく愛された身体はギシリと痛む。
あちこち染みがついたシーツをベッドから引き剥がすと、身体に巻きつけ、シャワーを浴びるために浴室へと向かった。
その時、浴室のドアが開き、情事の跡など微塵も感じさせない、さっぱりとした顔でバルフレアが出て来た。
「なんだ、まだそんな格好か?」
「仕方ないだろう、身体が痛いんだよ。誰かさんのせいで・・・。」
口を尖らせて文句を言えば、急に腰を抱かれて引き寄せられた。
「その誰かさんって、俺のことか?」
楽しそうにくつくつ笑いながら、バルフレアはヴァンの項に唇をはわせた。
「あ、ちょっと!やめろって!」
くすぐったさにヴァンは身をよじって抵抗した。だが、男の唇は鎖骨に落ち、指は胸を這う。
「もう、今日は無理だからっ!やめろって。明日立てなくなるだろう!」
半分本気で抵抗すると、男の唇と指はあっさり離れていった。
「ふん、十代の割には淡白だな。」
「なに言ってんだよ。あんたが凄すぎなのっ。」
小馬鹿にしたバルフレアの言葉に悔しくなって反論すれば、男はニヤリと余裕の笑みを返した。
「それは誉め言葉だろう?」
もう、やってられないと、ヴァンは頭を振って浴室に向かった。
浴室のドアを開けるとき、ふと気になって後ろを振り返ると、バルフレアは鏡の前で身支度を整えていた。
「え〜、アンタこれからまた出かけるの?」
驚いて目を丸くしたヴァンに、バルフレアは艶っぽいウインクをよこした。
「久しぶりの街だ。野暮は言うなよ。」
「別に、言わないけどさ・・・」
男のタフさに思わず溜め息が出る。
鏡の前の男は、呆れるくらい格好良く、自信たっぷりの様子だ。
「ま、アンタなら街の綺麗なお姉さんと、もう1ラウンドくらい軽く出来そうだよな。」
だけど、程々にしときなよ。明日の出発の時間に遅れたら、またアーシェがうるさいぞ――――そう軽く言い捨てて、ヴァンは浴室のドアを閉めた。


熱いシャワーを浴びて全身を洗い、バルフレアが溜めておいてくれた浴槽に身を沈める。ゆっくりと身体の強張りがほぐれ、腰の痛みも和らいでいく。
「もう、バルは激しすぎなんだよ。」
少し頬を染めて、自分の身体をみる。あちこちにつけられた愛された痕。
「お前が俺のもんだって印だ。」
耳元で囁かれた甘い声音がよみがえり、ヴァンは更に頬を赤く染め、バシャバシャと手荒に顔を洗った。
「オレがアンタのものなら・・・アンタは誰のものだよ・・・?」
決して、誰のものにもならないくせに、こうして簡単にオレのことは縛り付ける―――。
今頃、酒場で美女の細い腰を抱いているだろう男を思い、ヴァンは痛む胸に少しだけ涙を流した。



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