二の篭(バルヴァン文)

□バルヴァン中くらいの話
1ページ/17ページ




 ■ 二人で・・・ ■



旅の途中で立ち寄った町。
夕飯までの自由行動に、お子様二人組は元気に広場に飛び出していった。
「何か、市が立ってるらしいわよ。」
宿のラウンジで軽く一杯やりながら、相棒のフランがそう話すのを、興味なさそうにバルフレアは聞き流した。
「一緒に行かなくてよかったの?」
悪戯っぽい瞳でフランに顔を覗き込まれ、バルフレアは思いっきり嫌そうに顔をしかめた。
「俺はお子様達のお守り役になった覚えはないね。」
だが、フランは涼しげな笑いを浮かべて言った。
「あら、違ったの?」
バルフレアは小さく溜め息をつくと、苦々しそうに言った。
「勘弁してくれよ。」
「なんだか、最近楽しそうよ?あなた。」
「・・・悪い冗談だな。」
少し返事が遅れたのは、図星だったからか。バルフレアは不味そうにグラスの酒を飲み干すと、席を立った。
「少し、風に当たってくる。」
フランは何も言わずに、グラスを目の高さにあげて微笑んだ。



宿を出ると、市が立っているせいだろう、町はざわめき活気があるのが感じられた。
バルフレアは当てもなく、通りを人の流れに沿ってしばらく歩いた。
すると、前から見慣れた明るいプラチナ・ブロンドがやって来た。
「あ、バルフレア!」
通りを歩く長身の目立つ風貌の男を見つけ、ヴァンは手を振りながら、人混みを掻き分けて走り寄ってきた。
周りの目が自然と集まる。
バルフレアは、照れくさい羞恥を感じて、そっけない態度をとった。
「お前一人か?お嬢ちゃんはどうした?」
だが、ヴァンは嬉しそうに無邪気な笑顔を浮かべたまま答えた。
「パンネロはアーシェとバッシュと一緒。途中で二人に会ったんだ。
それよりさ、これ見て!」
そう言って、目の前に差し出したのは、鮮やかな色使いの細い組み紐二本。
「さっき、射的の景品でもらったんだ。ミサンガって言うんだって。」
ふうん、と気のない返事のバルフレアに構わず、ヴァンは楽しそうに説明する。
「南方の国のブレスレットらしいよ。願い事をしてから手首に巻いて、それが切れたら願いが叶うんだって!」
ヴァンのきらきらした瞳に、ふと悪い予感がしたバルフレアだったが、案の定、ヴァンの次の言葉は、その予感通りだった。
「だから、一つあんたにあげるから一緒にしようよ!」


「おい、ヴァン。」
バルフレアは脳裏に、おかしそうに笑うフランの顔を思い浮かべながら言った。
顔には、ことさら渋い表情を作る。
「こういう事は、お嬢ちゃんとでもやれよ。俺とお前の野郎同士でやったら、気持ち悪いだろうが。」
途端にヴァンの笑顔がぐらりと崩れた。
「気持ち・・・悪・・い・・?」
ヴァンの傷ついた表情にバルフレアは自分の失敗に気付いた。だが、バルフレアが何か言う前に、ヴァンはサッとその表情を泣きそうな笑顔の下に隠した。
「そうか、こんなの子供っぽいもんな。ごめん!忘れて!」
そう早口で言って、止める間もなく、また人混みの中に走り去っていった。
後に残されたバルフレアは、後悔と自分への苛立ちで深い溜め息をついた。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ