二の篭(バルヴァン文)

□恋するシリーズ
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 ■ BECOUSE・・・ ■



ヴァンには理由がわからなかった。
夜中に喉が渇いて起きてみれば、見張り番のバルフレアに呼ばれた。何も考えずに近付くと、あっという間に抱き締められてキスされた。
しかも、バルフレアにキスされるのは、これが初めてじゃなかった。


だけど、どうして?
何故オレにキスするの?


理由を聞けば、いつも返ってくる答えはバラバラだった。
煙草が切れたから。
酒がなくなったから。
本を読むのに飽きたから。
今も、睨みつけて問いただせば、ニヤリと笑って、バルフレアは悪びれずにさらりと答えた。

「暇つぶしだ。」


そんなコトがキスしたい理由だなんて、ヴァンにはさっぱり理解できなかった。
それなら、今起きてきたのがアーシェだったら?
アーシェにもキスしたのだろうか?
そう考えたら、ヴァンは胸の奥がズキンと痛んだ。


それなのに、バルフレアは薄く笑って言った。
「お前が、毎回なんでって理由を聞くから言っただけだ。深い意味なんてない。気にするな。」
「気にするよっ!」
ヴァンは叫ぶように言うと、顔を更に赤く染めて言った。
「だって、オレとキスしたいからじゃないじゃん・・・。オレにキスするなら、ちゃんとオレにしたいって思って、・・・・・・キスしろよな。」


言いながらヴァンはうろたえて、声がみるみる小さくなった。
これじゃあ、まるでキスをねだっているみたいじゃないか。恥ずかしさで、頬が赤く染まる。
だけど、煙草や酒の代わりなんてイヤだった。何かの代わりにキスなんて。



「そうか。じゃあ今度からは、したい時にキスしていいんだな?」
「え?」
驚いて顔を上げたヴァンのあごを捕えて、バルフレアはすかさずキスした。
大きな空色の瞳を丸くしたヴァンを優しく抱き締めて、バルフレアは楽しそうに笑った。
「お前が言ったんだからな。お前にキスしたいなら、していいって。」
「ちが、そんなコト言ったんじゃ・・・、」
慌てるヴァンの唇を素早くふさぐと、バルフレアは何度もキスを繰り返した。
突っぱねるようにバルフレアの胸に置かれたヴァンの手は、やがておずおずと背中に回された。



甘い吐息が切なく漏れて、繰り返されるキスに熱が上がる。
「どうして」なんて、もういいよ。
あるのは、ただ呆れるほどの素直な要求。


何かの代わりじゃなくて、オレにキスしたいからキスして欲しいんだ――――。




〜FIN〜


(2010/11/7)

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