DDFFの篭

□FFの日SS
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 【FF10の日★記念SS】


「どうした、ユウナ?」
夕食の後片付けの最中、ヴァンと並んでお皿を拭いていたユウナは、急にヴァンに顔を覗き込まれてびっくりした。
「え、何?」
大きな瞳をぱちぱちと瞬かせてユウナが問えば、ヴァンはおかしそうに笑った。
「何って、さっきからオレの顔見ては溜め息ついてたじゃないか。どうしたんだよ?」
すると、鍋を片付けていたティファが悪戯っぽく笑いながら話に入ってきた。
「そりゃあ、ヴァンを見てたら溜め息をつきたくなるでしょ?勝手気ままなコトばっかしてるんだから!」
「迷ってばっかのラグナよりマシだろ!」
ヴァンがそう口を尖らせれば、後ろの方からラグナのくしゃみが聞こえた。
そのタイミングの良さに、思わずヴァン達三人は顔を見合わせて笑った。

「で、何があったんだよ?」
ひとしきり笑った後、ヴァンは少し真面目な顔になってユウナに再び尋ねた。
「うん、実はね・・・、」
ユウナは恥ずかしそうに俯きながら、そろりと上目使いにヴァンの顔を見ながら言った。
「ヴァンの髪と瞳の色が、彼と同じだな〜って思ったの。」
「彼?ああ、今眠っているあの彼か・・・。」
ヴァンはティファと顔を見合わせながら頷いた。
そう言えばラグナとヴァンが駆けつけた時、彼はすでに倒れ、ジェクトは皇帝に連れ去られた後だった。
固く閉じられた瞳の色は、自分と同じブルーだったのか―――ヴァンがそんなことを考えていると、ユウナは柔らかな笑みを浮かべながら言った。
「ヴァンと同じ空の色、ううん、空を映した海の青かな。ティーダは海が大好きだから。」
「へー、そうなのか。」
「きっとね、ヴァンと仲良くなれると思うよ。」
「そうか。なら、早く目が覚めるといいな。」
ヴァンのその言葉に、すっとユウナの顔が曇った。
「こら、ヴァン!」
たちまちティファがヴァンの横腹をつついた。
「あ、ごめん!またオレやった?」


ヴァンの失言はいつものことで、ヴァンも自覚はあるものの反省する様子はなかった。だが、いつもヴァンを何くれとなく面倒みてくれているユウナの落ち込む姿に、ヴァンは本気で焦った。
「ごめん、ユウナ。ほんと、ごめん・・・。」
ぺこりと音がしそうな勢いで頭を下げるヴァンに、ユウナは恥ずかしそうに首を振った。
「ううん、私こそごめん。ヴァンは心配して言ってくれたのにね。」
「悪気はないけど、一言多いんだよね。」
ティファがそう溜め息をつけば、ヴァンは頭をさげたままで、ティファにイーと歯をむき出した。
その様子にユウナが吹き出し、ヴァンも頭をかきながら笑った。そして、少し照れくさそうにしながら言った。
「なあ、ユウナ。寂しくなったらオレの瞳を見ろよ。」
「え?」
「同じなんだろ、あいつとオレの瞳の色。だから、寝ている間だけオレ代わりになるからさ。」
「ヴァン・・・。」
驚きで目を丸くするユウナに、ヴァンはニカッと悪ガキの笑顔を向けた。
「じゃあ、明日も早いから、オレもう寝るよ。おやすみ!」
急ぎ足で駆けて行くヴァンの後ろ姿に、ユウナは小さく「ありがとう」と呟いた。


**おしまい**



(2011/10/10)

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