DDFFの篭

□FF12ヶ月物語
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【 8月・・・8X12 】



”だから、なんでそうなる?”

スコールは内なるぼやきを心で吐きながら、夕食のテーブルを囲んだ同席の3人を見詰めた。
髪の色が微妙に異なる3人は、わいわいと楽しげに頭を寄せ合って話し込んでいる。その声は魔列車のガタガタと揺れる音と相まって、スコールの耳朶を苛んだ。


「魔列車って、『ゆうれい』がライズするって知ってたか?」


始まりはヴァンのそんな一声。
「へー、そうなのか。」
ジタンはサラダを口に放り込みながら、驚いたように言った。
「『ゆうれい』がライズするって、不思議だよな。どんな形してるんだろうな。」
バッツは手をあごに当てながら、視線を天井に向けて考え込んだ。
「本物の『幽霊』だったら、どうする?イミテーションより怖いかもな。」
ジタンのからかうような口ぶりに、ヴァンが顔をしかめた。
「本物のわけないだろう。ライズするんだからアクセサリのことだよ。」
「分かってるって。冗談だよ。」
ケラケラと笑うジタンに、ヴァンはプンと膨れた。
「でもさ、『ゆうれい』がライズするってことは、何かしらそんな要素があるってことじゃないのか?」
バッツは小首を傾げて考え込んだまま、ぼそりと言った。
「「そんな要素?」」
ジタンとヴァンが目を丸くして問い返した。


その辺りで、スコールの脳内には危険を知らせるアラームが鳴り響いていた。
だが、4人掛けの席の奥に座ったスコールは、逃げるすべがない。いや、そもそも俺が独りで座っていたのに、コイツらが断りもなく勝手に座ってきたのだと、スコールは今となっては取り返しのつかないことに憤った。
そんなスコールの内なる葛藤など露知らない3人は、頭を寄せ合って話し込む。


「だから、成仏しきれない想いが漂っているんだろうって思うんだよ。」
バッツの意見に、ジタンは眉をひそめて考え込んだ。
「なら、もしかしたら本物の『幽霊』が出てもおかしくないって言うのか?」
「そこまでは俺にも分からないけど。」
すると、ヴァンが蒼い瞳をクルリと輝かせて言った。
「じゃあ、オレ達で探してみたらいいんじゃないか?」
その言葉に、スコールはギョッとしてフォークを取り落としそうになった。そして、残りのメンバーの顔をこっそりと盗み見て、更にドキリとした。
バッツとジタンの顔も、ヴァンに負けない位キラキラと好奇心で輝いていたのだ。
「そうだな、考えてもしかたない。」
「だろう?」
頷き合うジタンとヴァンに、バッツがニヤリと笑って言った。
「もちろん、誰が最初に『幽霊』を見つけるか競争するよな?」



”だから、なんでそうなる?”


スコールは、心底呆れかえって3人を見詰めた。
盗賊のジタン、空賊のヴァン、旅人のバッツは常に何かしら競い合っては、「勝った」「負けた」と騒ぎ合っている。
”今はそんなことをしている場合じゃないだろう?”
スコールが秘かに心の中でツッコんだ事は、もはや両手では足りない。
”まあ、せいぜい頑張ってくれ”
これでやっと独りの静かな食事に戻れるとスコールが考えた時、3人は勢いよく席を立った。


「さあ、じゃあ行こうか。スコール。」
隣の席だったバッツに腕を取られて、スコールは驚きで目を見開いた。
「待て、なんで俺まで?」
眉をひそめるスコールに、ヴァンが笑いながら言った。
「だって、誰が1番早く見つけたか判定してくれる審判がいるだろ?」
「冗談じゃない、俺はごめんだ。」
憮然とするスコールに、ジタンがにやにやしながら言った。
「おんやぁ?スコール、もしかしたら『幽霊』が怖いのか?」
「違う!」
即座に否定したスコールに、バッツが更に腕を引っ張った。
「なら、行こうぜ。」
「だから、なんでそうなる?」
今度は心の中でなく、声に出したスコールの背をヴァンが押した。
「いいから、いいから。どんな『幽霊』か楽しみだな。」


”オレはちっとも楽しみじゃない!
そもそも、『幽霊』は楽しみにするものじゃない!”


心の中で叫ぶスコールを囲みながら、3人の陽気な若者達は意気揚々と食堂車を出て行った。




〜FIN〜



夏ということで、小道具に『ゆうれい』を使ってみました^^
全然怪談っぽくありませんでしたが。

この後、3人に魔列車中を引き摺り回されてげっそりしたスコールが、まさに『幽霊』みたいだったとか、なかったとか・・・(^^;)



(8月 拍手文)

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