DDFFの篭

□FF12ヶ月物語
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【 7月・・・7X12 】



ひずみ解放の後の休憩時間に、ティファは珍しくうたたねをしていた。
背中をもたれかけた大きな木の陰は涼しく、さわさわと揺れる木の葉の音が耳に優しい。


あ〜、昨日は夜遅くまでユウナとおしゃべりしてたからなぁ。
今日はちゃんと早く寝なくちゃ。


そんな事を考えながら、ティファはうとうととまどろんでいた。
その珍しい姿を見つけて、ヴァンが蒼い瞳を丸くした。


「あ―、ティファ寝てるじゃん。」
「疲れてんだろ、そっとしてやれよ。」
コーヒーを飲みながら言うラグナに、ヴァンは膨れっ面を向けた。
「この前オレが休憩中に寝たら、ライトにめっちゃ怒られたんだぜ。」
「ヴァンとティファじゃ、日頃の行いが違うだろ。」
「なんだよ、それ?なんかオレの行いが悪いみたいじゃん。」
「あれ、自覚なかったのか?」
「ラグナに言われたくないよ。」


賑やかというより騒々しいラグナとヴァンの会話が、風に乗って聞こえてくる。
ティファはまどろみながら、クスリと笑った。
ヴァンとラグナときたら、いつもこんな感じだ。
自分じゃ大人だと言い張りながら、大人に成り切れない子供と、年齢じゃ大人と呼べる歳ながら、子供の部分をそっくり残して大きくなった大人。
どちらが大人かなんて比べるだけ馬鹿らしい。どちらも『やんちゃな男の子』なのだから。


ティファがそんな事を考えている間にも、ヴァンとラグナのたわいのない言い争いは続いている。そして、その声が段々と近付いてきた。
なんだろう?―――とティファが思うより早く、ぽすんと膝に軽い衝撃が当たった。
驚いて目を開くと、膝に薄い金色のヴァンの頭が乗っている。
「ティファが寝るんだったら、オレも寝る。」
そんな勝手な事を言うと、ヴァンは目を閉じた。
「おいおい、ヴァン。」
焦ったラグナの呼びかけに、ティファは顔を上げた。目が合うと、ラグナは苦い笑顔を浮かべた。
「ごめんな、ティファ。まさか、こんなことになるとは。」
いつも勝手気ままなラグナだが、ヴァンは更にその上を行く。ヴァンは、唯一ラグナの調子を狂わせる人物だった。
「いいよ。私なら気にしないよ。」
そう言ってヴァンの柔らかな髪をすくティファを、ラグナは困ったように眺めた。そして、ぽつりと口の中で呟いた。
「俺は気にするんだよ。」
その小さな独り言に、ティファは小首を傾げた。
「なにか言った?」
問い掛けるティファに、ラグナは笑って首を振った。
「いや、何でもない。」
そう答えたラグナだったが、立ち去らずにじっとヴァンを見詰めている。そんなラグナをティファは興味深げに見上げた。


いつもは真面目とは縁遠いラグナだが、今の表情はすこぶる真剣だ。そのくせ、どこか幼い表情でもある。
まるで、大事なおもちゃを人に貸してしまったような。
返してと言えずに、内心はらはらしながら待っている子供のような。


ティファは「ああ、なるほど」と一人頷くと、ラグナに笑いかけた。
「ねえ、ラグナもここでお昼寝しようよ。」
「え?」
唐突なティファの提案にラグナはきょとんとした。だが、構わずティファは手を伸ばして、ラグナの上着を引っ張った。
「たまには、皆でお昼寝するのも悪くないでしょう。つかの間の戦士の休息よ。」
「そ、そうか。じゃあ・・・。」
ラグナは口では気乗りしない風に言いながら、いそいそとティファの隣に腰を下ろした。
そして手を伸ばすと、そっと愛しそうにヴァンの髪を撫でた。
ヴァンはすでにスヤスヤと寝息をたてて眠っている。
「ここは、風が気持ちいいな。」
ラグナの言葉に頷くと、ティファは静かに目を閉じた。
そんなティファを見て、ラグナはもう一度ヴァンの髪を撫でるとゆっくりと目を閉じた。



〜FIN〜


ティファって、ものすごく頼れるお姉さんvvなイメージです。
そして、ヴァンのこともすごく可愛がっていそう^^
きっとティファは、ラグナがヴァンのことを好きなのもお見通しなのだ!と思って、こんな話にしました。
ティファが目を覚ました時、ラグナが自分の膝にヴァンを奪い取っていたら笑えますね(^^;)




(7月 拍手文)
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