DDFFの篭

□FF12ヶ月物語
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【 3月・・・3X12 】


いつもは賑やかな夕食時。
一日の終わり、各自の戦闘の報告や自慢話など、わいわいと皆の声が飛び交う時間。
だが、今日は心なしかひっそりとしている気がした。
オニオンナイトは、気の進まない様子でパンをちぎって口に運びながら、ポカリと空いた隣の席を見た。
「ほら、ぼんやりするなよ。子供はしっかり食べろ。」
いつもなら、そうヴァンの声が飛ぶことだろう。
あんなに煩わしかったヴァンの声が聞こえないことが、今はひどく寂しかった。


その時、パサリと音がして後のテントからユウナとライトニングが出てきた。
はじかれたように立ち上がったオニオンナイトを、ライトニングは鋭い眼差しで見た。その視線が自分を責めているように感じて、オニオンは力なく視線を伏せた。そんな小さな騎士に、ユウナは優しく声をかけた。
「大丈夫。ヴァンは大した怪我じゃなかったよ。ライトのヒーラーで回復してもらったから。」
「ふうん、・・・そう。」
オニオンは、ホッとした内心をわざと素っ気無い口調で隠すと、また座って食事を続けた。そんなオニオンを横目で見て、ライトニングは何も言わずに立ち去って行った。
「ねえ、心配なら見てきたら?」
ユウナはオニオンの隣に座ると、柔らかく微笑みながら言った。
「だって、もう心配ないんだろ。僕、まだ食事中だし。」
ぷいと顔を背けるオニオンに、ユウナはお盆にのせた食事を差し出した。
「はい、これヴァンの食事。たまちゃんが持って行って。」
「なんで?」
驚くオニオンに、ユウナは澄まして答えた。
「だって、私は今から食事だし。伝説の騎士さんは、女性に優しいはずよね?」
「ずるいよ、ユウナ。」
口を尖らすオニオンに、ユウナは楽しげに言った。
「お願いします。」
渋々オニオンは、お盆を受け取った。するとユウナは、素早く彼の食べかけの食事もお盆に乗せた。
「ついでに一緒に食べるといいッス!」
がっくり肩を落として、オニオンはヴァンのテントへと向かった。



「お、やっと飯が来た。」
オニオンがテントに入ると、ヴァンが待ちわびたように笑顔を向けた。
「ふうん、元気そうじゃん。」
オニオンは素っ気無く言いながら、ヴァンに夕食の盆を手渡した。
「あったり前だ。こんなの、ユウナが大袈裟なんだよ。」
ヴァンは、右足の包帯をペシリと叩きながら笑った。その足を見て、オニオンナイトはぎゅっと唇を噛んだ。
それは、ヴァンがオニオンナイトの代わりに負ったもの。聖域に帰る途中、狡猾なケフカのイミテーションに不意打ちで後から襲われた。避けようのない攻撃が当たると思った瞬間、ヴァンが飛び込んできてオニオンナイトをかばったのだ。
普段から自分を子供扱いするヴァンにだけは、助けられたくなかった。
その悔しさと情けなさで押し黙るオニオンに構わず、ヴァンは明るく話し続けていた。
「それなのに、ライトはぎゃんぎゃん怒るしさー。あいつヒーラーにオプティマ・チェンジしたってのに、全然癒してないつーの!まいったよ。」
「僕、お礼なんか言わないよ!」
オニオンは、堪らずに叫んだ。
「別に助けなんか要らなかったんだ。僕一人だって大丈夫だった。それなのにヴァンが飛び込んできて、こんな怪我までして・・・、」

―――違う、こんなことが言いたいんじゃない。

頭ではそう思うのに、オニオンの口は止まらなかった。
「ヴァンが悪いんだ。僕は少しも悪くない。」
そんな子供じみた言葉を口にした時、ヴァンの手がオニオンナイトの頭にぽんと乗せられた。そして、ぐちゃぐちゃと乱暴に髪をかき回した。
「わ、ちょっと!何すんのさ。」
慌てるオニオンに、ヴァンは明るく笑って言った。
「うん、お前はちっとも悪くない。オレがドジったんだ。だから、もう気にすんな。」
その言葉に、オニオンは目を丸くした。
「き、気にしてなんかないよ。僕は、僕は・・・、」
言い返そうとするのに、言葉が続かなかった。頭に置かれたヴァンの手が温かくて、目の前のヴァンの笑顔が優しくて、胸がいっぱいになった。
「もう、わかったから飯食おうぜ。冷めちまうだろ。」
もう一度オニオンの頭を軽く叩くと、ヴァンはフォークを取り上げた。
「・・・うん。」
オニオンは小さく頷いて、お盆から自分の食器を取った。
「うまそうだな、いっただきまーす。お前もしっかり食べろよ、大きくなれないぞ。」
思った通りのヴァンの言葉が飛び、オニオンはスンと小さく鼻をすすった。
ぱくりと頬張ったピーマンは、いつもなら苦くて嫌いなのに、何故かじんわりと甘く感じた。



〜FIN〜


ヴァンたまv
実は、このCP大好きなんです〜♪
色恋にはならないけど、ほほえましいvvそして、なにより可愛いvv

いつも背伸びしてるたまちゃんが、ヴァンの前ではお子様になれるのがいいですね^^
いつか魔列車のエピを、私流に捻じ曲げて書きたいです。

それから、ライトニングのヒーラーはブレイブを回復するもので傷は癒しませんが、ちょっと小道具的に使わせてもらいました。捏造設定で、ごめんなさい。
ちなみに、ライトはたまちゃんを責めている訳ではありません。
「ああ、もうお腹すいた」というだけの不機嫌な顔だったのです(^^;)



(3月 拍手文) 
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