DDFFの篭

□FF12ヶ月物語
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【 11月・・・11X12 】



その日、ラグナはヴァンと行動をともにしていた。
今夜の野営地の周りの巡察。
面倒な夕食作りから免除され、ヴァンとも散歩がてらイチャつけてラグナはご機嫌だった。
「なんだよ、ラグナ。昼間よっぽどイイことあったのか?」
随分としまらない顔してるぞと、相変わらずのヴァンの失礼な一言にもめげない。
辺りに人目がないのをいいことに、ぐいっとヴァンの肩を抱き寄せた。
「昼間じゃなくて、今がイイことなの。こうやってヴァンと2人っきりなんだからね。」
臆面もなく言いのけるラグナに、ヴァンは頬を染めて口を尖らせた。
「何言ってんだよ。恥ずかしいヤツ。」
そう言いながらも、ヴァンはラグナの手を振り払わなかった。
ラグナは嬉しそうに笑いながら、更にヴァンを抱き寄せたその時、後ろから甲高い声で呼び止められた。


「ちょっと!そこのあなた達、お待ちなさい!」


何事かと2人が振り返ると、いつぞや見たことのある小さなぬいぐるみ・・・もとい、高貴なる淑女が立っていた。
彼女は大人の腰ほどの背の高さしかないが、最強の呼び声の高い魔導師。かわいらしい見た目と裏腹に気位が高く、気性も荒かった。ブチ切れてしまうと誰も手に負えないので、「要!取り扱い注意」な人物だった。
「あ、いつかのぬいぐるみ。なあ、お前ってなんさ・・・うっぷ!」
さっそく失言しかけたヴァンの口を塞いで、ラグナは慌てて尋ねた。
「これは御機嫌よう、シャントット博士。何か御用ですか?」
「用があるから声をかけたのですわ。」
シャントットはツンとすまして、不機嫌そうに言い返した。
内心やれやれと思いながら、ラグナは低姿勢を崩さない。
「で、その御用とは?」
尋ねたラグナに、シャントットは深い溜め息をついて答えた。
「人を、私の弟子を探してきてほしいんですの。」
「「弟子?」」
声をそろえて聞き返したラグナとヴァンに、シャントットはこくりと頷いた。


シャントットの話によると、弟子の名はプリッシュ。
ヴァン達コスモス軍のメンバーがひずみを解放している間、シャントットと共に聖域のコスモスの警護をしているのだが、これがすぐに逃げ出してしまうらしい。
周辺の見回りをすると言って出て、ちっとも帰ってこない。
あちこち覘いて見ては、なにか面白いものがないか楽しいことはないか探して遊んでいるだけなのだった。


「もう、出来の悪い弟子を持つと苦労しますわ。」
シャントットは額に手を当てて、大げさに深い溜め息をついた。
「ですから、あなた達お願いできますわね?」
断ることなど念頭にないシャントットの言い方に、ヴァンはムッと顔をしかめた。
「なんで、オレ達が・・・」
と言いかけたヴァンの口を、慌ててラグナが押さえた。
「はいはい、了解しましたよ。プリッシュちゃんを探してくればいいんですね。では、さっそく。」
「おい、ラグナ。」
抗議するヴァンを引きずって、ラグナはさっさとシャントットに背を向けて歩き始めた。
「何でだよ、ラグナ。なんで、こんな面倒なこと勝手に引き受けるんだよ?」
納得できないでブツブツ文句を言うヴァンに、ラグナはにっこりと笑った。
「だってさ、俺達にも帰らなくていい大義名分ができたじゃないか。」
「たいぎ・・・めいぶん?」
きょとんと問い返したヴァンに、ラグナは楽しげにウインクをした。
「そ。これで当分2人だけで行動できる良い口実ができただろう?」
その返事に、ヴァンは呆気に取られ、やがてじんわりと頬を染めた。


「・・・たく。こんな悪知恵ばっかり働いて。」
ヴァンは口の中でブツブツと文句を言ったが、「イヤだ」とは言わなかった。
「探すの、きっと大変だろうねぇ。迷子になったら、もっと時間がかかるかな〜?」
更に調子に乗るラグナを、ヴァンはとりあえず一発殴った。
そしてその後、ラグナの手をぎゅっと握ってヴァンはゆっくりと歩き出した。



〜FIN〜


11X12と言いながら、まったくのラグヴァン文でした〜(^^;)
シャントットもプリッシュも、小道具扱いですみません!

ちなみに文中のヴァンの「いつかのぬいぐるみ」発言は、DDFFの篭「FFの日SS」で書いた話を踏まえたものです。
よければ、そちらも読んでみてくださいね。



→次ページに、ちょこっとおまけ文あります^^


(11月 拍手文)


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