DDFFの篭

□ラグヴァン短編集
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* Don't forget me! *



ライトニングと別れ、クジャとケフカの前から撤退したラグナ達だったが、ラグナは更に仲間達とはぐれて、一人さまよい続けていた。
見失った仲間と再び出会うことを願いながら、ラグナは雪原を越え森林へと辿り着いた。
「皆どこに行ってんだろうなー。・・・あ、俺が皆からいなくなったのか?」
そんな独り言をつぶやいていると、森林からヴァンが飛び出してきた。
「お!ヴァンく〜ん。こっちこっち!」
明るく手を振るラグナに、ヴァンは顔を思いっきりしかめた。
「ラグナ!まだこんなとこにいたのか。どうせ、また迷っていたんだろ?」
「探したぞ」とか「大丈夫か」とかでもなく、いきなりの失礼なヴァンの態度に、ラグナも顔をしかめてみせた。
「おいおい、そりゃお互い様だろ?同じ時にはぐれて、ここで会ってんだからさ。」
だが、ヴァンはツンとして言った。
「オレはちゃんと用事があったんだ。それよりラグナ、聖域に戻る道わかってるか?」
ヴァンの言葉に、ラグナはうるさそうに手を振って言った。
「わーかってる、わかってる!今度は間違えないぜ。ほら、ヴァン。俺についてこーいってな!」


こうして、ラグナとヴァンは二人で聖域を目指すことになったのだが―――。
(なーんか、おかしい。)
ラグナは首をひねった。
チラリと前を行くヴァンの背中を見ると、明らかに後ろの自分を意識して、不必要に力が入っている。
再会してすぐは、いつも通りのヴァンだったのに、何故か急に無口になって、自分と距離を置くようになった。
(なんか、怒らすようなこと言ったっけかな〜?ってか、いつも俺の方が失礼なこと言われてるような気がするけどな・・・。)
首をひねりながら、ラグナは再会してからヴァンと交わした言葉を思い出していた。
(別れてからどうしてたって聞かれて、雪原を越えたって話をして・・・そこまでは普通だったよな。
それで雪原は寒かったから、また温泉に入りたいって言って・・・。)
「あ!」
ラグナは思わず叫んだ。前を行くヴァンが、びっくりして振り返った。
「急になんだよ?ラグナ。」
「いや、なんでもない。なんでもないよ〜、ヴァン君。」
笑ってごまかしながら、ラグナは突然のヴァンの態度の変化を理解した。
(温泉だ。ヴァンは、あの時のことを意識してんだ。)


旅の途中で、偶然見つけた温泉。
ラグナは、ヴァンと二人でその温泉につかった。
その時、不用意に顔を寄せてきたヴァンにラグナはキスをしてしまったのだ。
(ついって言うか、思わずって言うか・・。月明かりで、あいつ妙に色っぽく見えたんだよなぁ・・・。)
ポタポタと雫をたらした白金の髪が、月明かりに艶やかに輝いていたこと。
いつもは青く輝く瞳が、深く憂いを含んで見えたこと。
そして、ヴァンの淡く色づいた唇の柔らかさと暖かさと。
その時のことを思い出して、ラグナは思わず溜め息をついた。
(何やってんだろーな、俺。お子様相手に、しかも男に。迷うのにも、程があるよな。)
だが、あの唇にもう少し触れたかった。
あの柔らかさと暖かさを、もう少し味わいたかった。
前を行くヴァンの、ぎこちなく力の入った背中を、ラグナは悩ましげに見つめた。



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