DDFFの篭

□ラグヴァン短編集
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再び眠りについた仲間達の中で、ヴァンは寝付けずにいた。
ひとり膝を抱えて、夜空を見上げる。
鈍色の夜空は重々しいが、瞬く星々は美しい輝きだった。


不意に、ヴァンの肩にふわりと毛布がかけられた。
「だから不安なら、おじさんが添い寝してあげるって言ったでしょ?風邪ひくよ〜。」
いつものふざけた調子のラグナに、ヴァンは苦笑した。
「だから、要らないってば!」
そう言いながらも、ラグナのかけてくれた毛布の温かさに、ヴァンは目を細めて首までしっかりとくるまった。
「ほらね。若い子はすぐ薄着したがるけど、駄目だよ〜。風邪ひいたら、戦えないよ。」
笑って言うラグナにつられて、ヴァンも笑った。
「うん、そうだな。ありがと。」
素直に頷いたヴァンの横に座ると、ラグナは夜空を見上げて言った。
「で、夢のこと考えてたのか?」
わざと自分を見ないで言うラグナの優しさを、ヴァンは嬉しく感じた。
「うん。夢っていうより、多分、元の世界の記憶――と思うんだ。」
「そうか。」
「誰か、大事な人がいた気がしたんだ。その人に、オレ何か言われたのに、聞き取れなくて・・・。」
「そうか。」
ラグナは、相変わらず夜空を見上げたまま、相槌だけ打った。
「オレ、戦うためにコスモスにこの世界に呼ばれた―――そのことに疑問を持ったことはないんだ。
一緒に来たみんなと、一緒に勝つんだって思ってる。今もそれは揺るがない。だけど、」
そこでヴァンは言葉を切って、ぎゅっと胸の飾りを握り締めた。
「絶対に元の世界に帰りたい。あの人に会いたいって、思った。」
ヴァンのまっすぐな瞳に、ラグナはフッと肩をすくめた。
「な〜に、大丈夫さ。どうせ、なるようにしか、ならないし。大丈夫だって思うしかないって!」
ことさら明るい調子で言うラグナに、ヴァンは顔をしかめた。
「ほ〜んと、あんたっていい加減だよな。そんなで、よく今までやってこれたよなぁ。」
ヴァンの言葉に、ラグナはニヤリと笑いながら頷いた。
「よく言われるんだよねぇ〜。でも、なんとかなってるから、俺って天才かも。」
「自分で、よく言うよ。」
ヴァンは呆れたように、ラグナの肩に自分の肩をぶつけた。それにラグナもぶつけ返して、ひとしきり二人でエイエイと肩を押し合った。


「あ〜、もう何やってんだか。」
ヴァンは笑い出して、ごろりと両手を伸ばして地面に寝転がった。
だが、見上げた夜空はさっきまでとは違って見えた。ヴァンは、胸一杯に夜の冷えた空気を吸い込んだ。
「元気出たみたいだね〜、ヴァン君。」
ニッと、ラグナが覗き込む。
それに照れたように笑い返して、ヴァンは言った。
「ラグナって、たまに兄貴ぶった言い方するよな。それが、なんか懐かしい気がする。」
「お?おじさんから兄貴に格上げか?」
「たまに、ね。」
「たまかよ〜。」




なんのかんの楽しそうにじゃれあう二人に、背を向けて寝ていた筈のライトニングが、クスリと笑った。
すると、少し離れた所で横になっていたユウナとティファが、それを見てクスクスと笑い出した。
「やっぱ、ライトも気にしてたんだ?ヴァンのこと。」
そう小声でティファに言われて、ライトニングは笑った口元を引き締めた。
「別に。また夜中に泣き喚かれたら困る、と思っただけだ。」
そんなライトニングに、ユウナが笑って突っ込んだ。
「素直じゃないっス。」
すると、ライトニングは珍しく顔を赤らめて、毛布を顔まで引き上げた。
「さ、もう寝るぞ。次元の扉は近いんだからな。」
そんなライトニングに、ユウナとティファは顔を見合わせて笑うと、「は〜い」と返事をして目を閉じた。


鈍色の夜空に、美しく星々が瞬いて、戦士達の夜は静かに更けていった。




〜FIN〜


(2011/4/20)



題名の『Between Two Lights』は、『夜に、闇にまぎれて』・・・という意味です。
元の世界とコスモスに呼ばれた世界――そのふたつの世界にも係ってる語感でいいな〜と思い、つけました。




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