DDFFの篭

□ラグヴァン短編集
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* Between Two Lights *



ヴァンは夢を見ていた。
いや、正確には「夢を見ている自分」を見ていた。
眠っているのか、目覚めているのか、どちらともつかない曖昧なまどろみの中、朧な意識で自分を見ていた。


目の前に広がるのは、壮絶な光景。
無数の小型の戦闘艇が、砲撃を撃ち合い飛び交う戦場。
その中心にいる巨大で要塞のような戦艦が、煙を上げ浮力を失い、ゆっくりと落ちていく。
その下には、多くの人々が暮らしているであろう街があった。
このままでは、街が、人々の命が危ない――そう解っていても、ヴァンの身体は金縛りにあったように動かない。
「ちくしょう!なんで、誰も何もしないんだよ!」
心の中でそう叫んだとき、側に居た誰かが、ヴァンに何か言って去っていった。
その後ろ姿は逆光でよく見えない。だが、そのシルエットには見覚えがある気がした。
何故か懐かしいような不思議な思いが込み上げてくる。
そして、巨大要塞はゆっくりと落下しながらも、街から離れ、無人の砂漠へと方向を変えていった。
「ヴァン!・・・・・・・。」
また、誰かの声が聞こえた。
無線から、ヴァンに何か話しかけている。
すると、隣にいる別の誰かが叫んだ。
「・・・・・――!!」
誰かの名前だ。
何故か、聞き取れない。
それでも、その人の声は絞り出すように苦しげで哀しくて、ヴァンは胸が痛くなった。
誰?
誰なんだ?
ヴァンは、落ちていく巨大要塞に向かって手を伸ばした。




「ヴァン!」
伸ばした手を掴まれて、ヴァンは目覚めた。
「あ・・・、ラグナ?」
ゆっくりと目を開けて、ヴァンは目の前のラグナを見た。
「あ、ラグナ?じゃねえぞ!びっくりしたんだからな、こっちは。急にわぁわぁ叫び出すから!」
「え?オレ、叫んでた?」
ヴァンは、まだぼんやりとした頭に手を当てて、身体を起こした。全身に汗をかいている。夜の冷えた空気が、素肌を刺した。
「大丈夫?ヴァン。」
焚き火の向こう側から、心配そうにユウナとティファがこちらを見ている。
「うん、ごめんな。起こしちゃったな。」
ヴァンが頭をかきながら謝ると、ユウナが首を振った。
「ううん、そんなこといいよ。それより、怖い夢でも見た?」
「うん、大きな要塞みたいな戦艦が、街に落ちる夢だった。」
「元の世界の記憶、かな?」
ヴァンの言葉に、ティファが言った。
「たぶん・・・。」
ヴァンは、考え込みながら頷いた。
「夢を見て泣き叫ぶなんて、やることがお子様だな。」
パキリと手にした枝を折りながら、ライトニングが苦々しく言った。
「ライト!」
慌ててユウナが咎めた。
真面目すぎるライトニングと、ムードメーカーのヴァンの間には、しばしば言い争いが起きていた。
だが、ヴァンは今は他の何かに気を取られていた。
「叫んだかもしれないけど、泣いてないよ。」
ヴァンは、ムッとして言い返しながらも、腕組みをして考え込んでいた。


誰だろう?
あの声と人影。
とても大事な人だったような気がする。
そして、あの落ちていく巨大要塞。
まさか、あの中にあの声の人が―――。


「な〜に、深刻な顔してんだ?」
不意にぽんっと、頭の上にラグナの大きな手が乗った。
見上げると、ラグナが悪戯っぽい表情でヴァンを見ていた。
「そんな不安なら、今日はおじさんが添い寝してあげようか?ん?」
大きく手を広げて、ヴァンに言う。つられてヴァンは笑い出した。
「要らないよ。それに、おじさんって自分で認めるんだ、あんた。この間は、オレに『おじさんって言うな!』って、怒らなかったっけ?」
「ん〜、そうだったけかな〜?」
そのラグナのとぼけた様子に、ユウナとティファがクスクス笑い出した。
ライトニングだけが笑わずに、ぷいっと顔を背けた。




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