DDFFの篭

□ラグヴァン短編集
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【クリスマスSS】

*゜★。 SILENT EVE 。★゜*



12月24日の夜。
ラグナは、テントの中でウキウキと寝る支度をしていた。
今日は小さめのテントをゲットし、久しぶりにヴァンと2人だけの夜。焚火の側でバッツ達と話していたヴァンを無理矢理引っ張って、早めにテントに連れ帰ってきた。
念入りに枕を整えシーツを伸ばしながら、ラグナはふんふんと鼻歌を歌っていた。その横でダガーを手入れしていたヴァンが、不思議そうに言った。
「なーんか、ラグナ随分ご機嫌だよな。」
その言葉に、ラグナは満面の笑みで答えた。
「そりゃあ、そうさ。ヴァンと2人きりなんて久しぶりだし、それに」
ラグナは、そこで言葉を切ると少し声をひそめて言った。
「今日はクリスマスイヴなんだよ。」
「クリスマスイヴ?」
ヴァンが聞き慣れない言葉にキョトンとした。
そんなヴァンの頬を優しく撫でながら、ラグナは今日の昼間ティファから聞いた話をした。
「ティファが思い出したらしいんだ。明日は神様の生まれた日で、今日はその前日。」
「ふーん。コスモスとは違う、ティファの世界の神様の誕生日って事か。」
「そう。それで、今日と明日は降誕祭として、家族とか大事な人とお祝いするらしいんだ。」
最後を思わせぶりにヴァンの目を覗き込みながら囁いたラグナだったが、ヴァンはふーんと興味なさ気に頷くだけだった。ちょっとがっかりした表情を浮かべたラグナだったが、気を取り直してヴァンの肩にそっと手を置いた。
「だから、今夜はヴァンと一緒でよかったよ。俺にとって、ヴァンは・・・」
「あっ!」
ロマンチックにラグナが囁いている途中で、ヴァンがいきなり大声を上げた。
「な、なんだよ?いきなり、ヴァン。」
驚くラグナに、ヴァンはクンクンと鼻を動かせて叫んだ。
「なんか、外からすごくいい匂いがする。オレ、ちょっと見て来る!」
「あ!ちょっと待て、ヴァン!」
焦るラグナの手をするりとくぐり抜けて、ヴァンは外へと飛び出して行った。
ヴァンと入れ違いに、テントの中にふわりと甘いお菓子を焼く匂いが漂ってきた。
「あ〜、そういえばティファがクリスマスケーキ焼くって言ってたな。」
がっくりとうなだれながら、ラグナはペタンと寝床の上に座り込んだ。


甘いケーキの匂いに釣られて、外に飛び出してしまったヴァン。
その色気より食い気な様子は残念だが、ヴァンらしいといえば余りにヴァンらしい行動だ。
「いい所だったのにな〜。」
残念そうに呟いて、ラグナは頭をかいた。
それにしても、随分と惚れ込んでしまったものだと思う。ティファの話を聞いていた時、『大事な人』という所ですぐにヴァンの顔が思い浮かんだ。
正直、異世界の神様の誕生日など祝う義理などないし、こんな神々の戦いに巻き込まれたことも迷惑にしか思っていない。
だが、この世界でヴァンと巡り会えたことには感謝していた。それこそ、コスモスだけでなくカオスにだって感謝したい位だった。
「どんだけ惚れてるんだ、俺は。」
ラグナが苦笑混じりに呟いた時、ヴァンがテントに戻って来た。



「おーい、ラグナ!ティファからケーキもらって来たぞ。」
ヴァンは、得意そうにラグナにお皿を見せた。
「焦げちゃった端っこのとこだけど、いいだろ。うまそうだよ。」
見ると、お皿の上には10センチ位の長細いケーキの端っこが2本乗っていた。
「よかったな、ヴァン。」
よしよしと頭を撫でてやると、ヴァンは無邪気な笑顔を見せた。
「ラグナも一緒に食べよう。」
そう言ってフォークを渡すヴァンの手を、ラグナはニッコリと笑って押し戻した。
「俺はいらないから、ヴァンが食べろよ。少ししかないし、ケーキ好きだろ。」
だが、ヴァンは笑顔のままで首を振った。
「いいから一緒に食べよう。実はさ、ジェクトから美味しいケーキの食べ方を教わったんだ。」
「美味しいケーキの食べ方?」
怪訝な顔で首を傾げるラグナに、ヴァンは得意げに頷いた。そして、フォークでケーキを一口大に切って刺すと、ラグナの口元に持っていった。
「はい、ラグナ、あーんして。こうすると、自分で食べるより美味しくなるって。」



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