DDFFの篭

□ラグヴァン短編集
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* Remebrance *



「最速で飛ばしてやるよ!」

突然現れたイミテーションに、ヴァンは軽く大地を蹴って向かって行った。
微塵も揺るぎのない蒼の双眸。不意打ちで遭遇した敵に、臆することなく軽やかに剣をふるう。
「疲れを知らない少年だね〜。」
その後ろ姿に、ラグナは呆れたように肩をすくめた。
ラグナの先導で旅路を進んでいたライトニング一行は、敵の襲撃で散り散りになってしまい、今は個々に聖域を目指していた。
その途中で、ヴァンとラグナは偶然また出会うことができた。そして、今は二人で聖域を目指していた。

「よし、勝った。勝った。」
宣言通り、速攻でイミテーションを倒したヴァンは、いつもの勝利のポーズを決めた。
そして、バトル後のKPとライズしたアクセサリーを手にして、ラグナの元へ帰って来た。
「はい、お疲れさんでした〜。」
ラグナがいつものヘラリとした笑顔で迎えれば、ヴァンは顔をしかめた。
「なあ、ラグナっていつもこんな感じなのか?それでよく今まで大丈夫だったよな。」
そのヴァンの疑問を、ラグナは笑い飛ばした。
「脳ある鷹は爪を隠すって言うだろう?俺は、やればできる子なんだよ。」
その言葉に、ヴァンは首を捻った。
「鷹…って言うよりは、ナマケモノだけどな。」
これには、さすがのラグナも傷ついた顔をした。
「ちょっと、ヴァン君!ナマケモノはないだろ。」
だがヴァンは、さっさと先に進みながら、更にトドメを刺す。
「それに、子じゃなくて、おじさんだし!」
「はあ?何だって?今、おじさんって言ったか?」
「うん。だって、ラグナっておじさんだろ?」
明るく答えるヴァンに、ラグナはガックリと肩を落とした。そして、ヴァンの肩を掴むと、珍しく真剣な顔で言った。
「いいかい、ヴァン。君はもっと考えて口を開いた方がいいぞ。」
「そう?」
空色の瞳をぱちくりとするヴァンに、ラグナは深く頷いた。
「そう。時に言葉は凶器になる。この前も、君はライトニングにコスモスの歳のこと聞いてただろう?」
「あ、あれは違うよ!」
ラグナの言葉に、ヴァンは慌てて叫んだ。
「だって、最後まで聞いてないよ!すぐに、なんでもないって言ったし。」
赤くなって否定するヴァンに、ラグナは重々しく首を振った。
「あのね、『コスモスって何さ…』まで言ったら、最後まで言ったも同然でしょ。ライトニング女史が呆れてたよ。神様だって女性なんだ。歳を聞いちゃあ、イカンだろう。」
ラグナのもっともなお説教に、ヴァンは口を尖らせた。
「だってさ、気になるじゃん。オレ、そういうの駄目なんだ。すぐ顔や口に出るんだよ。」
拗ねたように俯いたヴァンの頭に、ラグナは笑って手を置いた。
「まだまだヴァン君はお子様ってことですかね?」
おどけたように言いながら、ラグナはヴァンの頭をポンポンと軽く叩いた。
その仕草に、ヴァンはハッとして顔を上げた。
「ん?どうかしたかい。」
ラグナの問いかけに、ヴァンは空色の瞳を大きく見開いて答えた。
「何か、今の…すごく懐かしい気がしたんだ。」
「そうか。元の世界の君も、きっと誰かにこうされたんだな。」
そう言って、ラグナはまたポンポンとヴァンの頭を優しく叩いた。その手の重みを、懐かしい思いで受けながら、ヴァンは頷いた。
「うん、そうだろうな。きっと、そうだ。」
ちょっと照れたような笑みを浮かべたヴァンに、ラグナも微笑み返した。
「さ、行きますか?元の世界に戻るために。」
「うん!」
前を向いて歩き出した二人に、白くそびえ立つ塔が目印のようにキラキラと光った。



〜FIN〜


(2011/4/7)
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