DDFFの篭

□DDFF発売前のSS
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**君のために出来ること**



「ヴァン・・・」
バルフレアの呼びかけに、ヴァンはハッとした。
その弾みで手からフォークが滑り落ちて、テーブルの下へと落ちた。
「あ、ごめん。寝ちゃってた?オレ・・・。」
バツが悪そうにヴァンは頭をかいた。
その顔には、疲労が色濃く刻まれていた。
無理もない。今、ヴァンはある特別な任務についている。
かつてのイヴァリースを襲った危機より、危険で大きな厄災―――それにヴァンは立ち向かっているのだ。

「ほら、来い。」
バルフレアは席を立つと、ヴァンの側に行きその少し痩せた身体を抱き締めた。
ヴァンは、ちょっとはにかみながらも力を抜いて、そっと身体を預けた。
「疲れてるんだろ?もう、先に寝ちまえよ。」
優しく背中を撫でながらバルフレアは言った。
「え?でも、せっかくバルフレアが・・・」
ヴァンはほとんど手つかずで残されたテーブルの食事を見た。
久しぶりに隠れ家に帰ってきたヴァンのために、バルフレアが用意してくれた食事の数々は、きっと素材も調理法も吟味しつくされたものに違いないのに。
だが、ヴァンは疲れに負けて、席についたまま居眠りをしてしまった。
「いいんだ。今はゆっくり眠れ。」
そう言うと、バルフレアはヴァンを促して寝室へと連れて行った。
「ごめん・・・。起きたら食べるから・・・。」
ベッドに入るとヴァンはそう言うのが精一杯で、すぐに眠りに落ちて行った。
「馬鹿野郎、俺に遠慮なんかすんな。」
バルフレアは小さく呟いて、ヴァンの頬を撫でた。
かつての幼さが残った頬ではないが、まだ柔らかだった頬がやせて尖り、目の下のくまが痛々しい。

もう行くな。
このまま、ここで俺の側にいろ。

そう言えたらどんなに楽か。
バルフレアはぎゅっと眉間のしわを深くした。
だが、それは決して口に出すことはない。
かつてヴァンは、自分を信じて一年待っていた。こいつに出来て俺に出来ないわけがない。
「待っててやるから。必ず、俺のところに帰って来い。」
そう言って、バルフレアは眠るヴァンを優しく抱き締めた。


〜FIN〜

(2010/11/20)



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