秘密の篭(R-18)

□青すぎる空
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白い髭の男達の一団は、ヴァンを担いだまま飛空艇ターミナルに駆け込んだ。そしてドッグに停泊している飛空艇に乗り込む。
「すぐに発進だ!」
慌ただしく男達は、緊急発進の準備を始めた。
「お前さんは、暫くここで大人しくしといてくれ。」
ヴァンは『艇長室』と書かれた部屋で、やっと男の肩から下ろされた。ヴァンを担いで走ったせいで、額に玉のような汗をかきながらも、白い髭の男は愉快そうに笑って言った。
ニカッと笑う顔が、意外に人懐こい。
その笑顔に少しホッとしながら、今のヴァンには頷くことしか出来なかった。


発進してから三十分くらいたった頃、白い髭の男が、食事をのせた盆を手に部屋に入ってきた。
「お前さん、食事がまだだろう?」
暖かなスープの香りが、ヴァンに空腹を思い出させた。
「いただきます・・・」
小さく言って、ヴァンはスプーンを手に取った。黙々と食事をするヴァンを、男は興味深そうに眺めた。
「お前さん、幾つだ?」
「十五。」
「親兄弟は?」
「先の戦争で死んだ・・・。」
「一人ぼっちか?」
「・・・うん。」
「で、生きるために帝国兵相手に春をひさいでいたのか?」
その古風な言い回しに、ヴァンはちょっと笑いながら頷いた。
「それぐらいしか、出来ないからね。オレには・・・。」
「そうか。」
男は、ヴァンの向かい側の椅子に腰掛けて、白い髭を引っ張りながら、ヴァンの話を否定も肯定もせずに聞いていた。
スープを飲みパンをかじりながら、ヴァンはチラリと男を見て言った。
「オレ、ヴァンっていうんだ。あんたは?」
すると、男は豪快にカラカラと笑って答えた。
「おお、まだ名乗ってなかったか!俺はレダスだ。空賊をやっている。」
「空賊!・・・あんた空賊なのか・・・。」
ヴァンは驚いて目を丸くした。思いもかけず、本物の空賊が目の前にいる。だが、手放しでは喜べなかった。
「あんた、空賊なら帝国兵にケンカ売ってどうなるか解ってんだろ?今頃、ターミナル調べられて、あんた達の事バレてるよ。」
「ああ、そうだろうな。」
レダスののんびりとした口調に、ヴァンは呆れてしまった。
「あんた、正気なの?帝国兵殴ってただじゃ済まないよ?」
すると、レダスはまたカラカラと笑って言った。
「しょうがないさ。お前さんが欲しくなっちまったんだから。空賊なら、欲しいものは奪わなきゃな。」

ヴァンはレダスの言葉に頬を染めた。
誰かに『欲しい』などと言われたのは初めてだった。急に居心地の悪さを感じて、スプーンを置いた。
口の中で、小さくつぶやく。
「バカみたい・・・。オレのために、帝国兵敵にまわして・・・。」
レダスのごつい手が、ヴァンの頭に置かれた。クシャリと金糸の髪をかき回す。
「バカって言うなよ。俺は大真面目だぞ。」
「レダス・・・。」
見上げたヴァンの瞳を、レダスの鋭い眼差しが捕らえた。その瞳の奥には、ゆらりと欲望の炎が燃え立っている。
「ヴァン。お前は今日から俺の情夫だ。故郷を捨てて俺と一緒に来い。」
そう言うと、レダスはヴァンを引き寄せた。
あっという間に強い力で抱きすくめられ、唇を奪われた。強引に舌を差し込まれ、逃げる舌を絡み取られる。
吸って、絡めて、甘噛みされて、くちゅくちゅと音がする程、淫靡に口内を蹂躙された。
「あっ、ああ、ふぅ・・・ん・・・」
ヴァンはレダスの舌の熱さに、身体の熱を押し上げられていった。口付けの合間に、甘ったるい声が漏れる。いつしかヴァンは、レダスの首に細い腕を絡めていた。
レダスはそんなヴァンを軽々と抱えあげると、部屋の奥のベッドに運んでいった。


ヴァンをベッドにそっとおろすと、レダスは自分の服を脱ぎ捨てて、たくましい裸身をヴァンの前に晒した。その分厚い胸には、無数の傷跡があった。
「これは・・・?」
ヴァンが身を起こして、その傷跡にそっと触れると、レダスはその手を取って口付けしながら答えた。
「帝国のジャッジ共とやりあった時の痕だ。アイツら、俺の大事な者達を奪って行った。」
そして、そのままヴァンを押し倒して、首筋に熱い唇を這わせていく。ヴァンは、素肌が触れ合う感覚にわずかに震えながら、つぶやいた。
「そうか・・・。あんたも、帝国に大事な人を奪われたんだね・・・。」


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