四の篭(拍手、イベント)

□2013年〜 Web拍手文
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 ■ からナイフ ■



サリカ樹林を歩いている時だった。
苦労して超えてきた険しいモスフォーラ山地と違って、この樹林は柔らかな陽光が降り注ぎ、出てくるモンスターも居眠りしているパンプキンヘッドや無害なフォーチュンラビやスプリンターばかり。
旅の一行は戦闘から開放され、のんびりした足取りとなった。
木の枝になった小さな果実を取るパンネロをフランが手伝い、地図を覗き込むアーシェにバッシュが歩み寄る。
自然、バルフレアとヴァンは仲間から離れて二人きりで小道を進んでいった。

「うーん、気持ちいいな。」

ヴァンは大きくのびをすると、胸いっぱいに爽やかな木々の香りを吸い込んだ。
そして少し後ろを歩くバルフレアを振り返ると、にっこり笑って言った。

「バルフレア、大好き。」

その言葉に、バルフレアはぴたりと足を止めた。
まだまだ初心なヴァンはキスひとつで頬を染め、照れて自分からは甘い言葉など言ったことがない。
それなのに穏やかな木漏れ日な中、ヴァンは柔らかな笑顔を浮かべて再び言った。

「オレ、本当にバルフレアが好き。大好き。」

その無邪気な笑顔に頷きながら、バルフレアはゆっくりとヴァンに歩み寄った。
そしてバルフレアが隣に立つと、ヴァンはにっこりと笑ってもう一度「好き」と繰り返した。


木漏れ日を受けて、ヴァンの白金の髪がキラキラと輝く。
その輝きよりもまぶしい笑顔で笑いかけられ、バルフレアは微苦笑を浮かべた。

「ずいぶん今日はサービスがいいんだな。」

冷やかすようなバルフレアの言葉に、ヴァンは照れたように鼻の下をこすった。

「へへ、たまにはいいだろ。」

そう言うと、くるりと前を向いてヴァンはゆっくりと樹林を歩き始めた。
その後ろをバルフレアもまたゆっくりと続く。

「なんかさ、こんなのんびりしたのは久しぶりだろ。だからかな?今までのことが急に頭の中に浮かんで・・・」

そうしたらバルフレアに会えて本当によかったと思い、好きだと言わずにいれなかったのだと、ヴァンは木々の枝を見上げながら照れくさそうに言った。

「なあ、もう一回言っていい?」

ヴァンは振り返ると、バルフレアの顔を覗き込みながら尋ねた。
その照れたような笑顔があまりに愛しくて、バルフレアは急いでヴァンを引き寄せると熱いキスで唇を塞いだのだった。


〜FIN〜


(2013/5月)


こんな無邪気にヴァンから「好き好きv」連発されたら、バルフレアにとってナイフどころかバズーカ並みの威力があったことでしょう(^^)

題名は古いイギリス映画から拝借。
なんかスパイ映画らしいんですが、私は見たことはありません。
もしお好きな方がいて不愉快に思われたら、ごめんなさいです<(_ _)>


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