四の篭(拍手、イベント)
□2013年〜 Web拍手文
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■ 音 ■
カチャ、カチャ。
コトン。
ガサガサ。
ナイフがベーコンを切る音、カップをテーブルの上に置く音、新聞のページをめくる音。
遅めの朝食の席についたバルフレアとヴァンは、顔を伏せたまま黙々と食事をしていた。
無言の二人の間を、ただ無機質な音だけが流れていく。
先に食事をすませた仲間たちは、とうにテーブルを後にしていて、田舎町の宿屋には他の宿泊客も見当たらない。
昨日、久しぶりに二人部屋になって。
お互いの思いのたけをぶつけるように抱き合って。
夜の闇に紛れてこぼした本音や甘い睦言の記憶が、清廉な朝の光の前では気恥ずかしくて堪らない。
二人は視線を交わすこともなく、ただただ目の前のお皿や新聞を見詰め続けていた。
ふとバルフレアは、読んでいる新聞から目を上げた。
すると、同じようにヴァンがお皿から顔を上げた。
カチンッと視線がぶつかり、お互いの瞳の中で小さな音を立てた。
それは、二人だけに聞こえる幸せの音。
どちらかもともなく笑みがこぼれて、「おはよう」と遅くなった朝の挨拶をした。
〜FIN〜
(2013年3月)
くっついたばかりの二人のイメージ。
若さのあまり暴走しちゃった前夜が恥ずかしい・・・、そんな初々しい二人。
ふと交わした視線で「大好き」って言い合えばいいのデス^^
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