四の篭(拍手、イベント)

□2013年〜 Web拍手文
6ページ/20ページ



 ■  ■


カチャ、カチャ。

コトン。

ガサガサ。

ナイフがベーコンを切る音、カップをテーブルの上に置く音、新聞のページをめくる音。

遅めの朝食の席についたバルフレアとヴァンは、顔を伏せたまま黙々と食事をしていた。

無言の二人の間を、ただ無機質な音だけが流れていく。

先に食事をすませた仲間たちは、とうにテーブルを後にしていて、田舎町の宿屋には他の宿泊客も見当たらない。



昨日、久しぶりに二人部屋になって。

お互いの思いのたけをぶつけるように抱き合って。

夜の闇に紛れてこぼした本音や甘い睦言の記憶が、清廉な朝の光の前では気恥ずかしくて堪らない。

二人は視線を交わすこともなく、ただただ目の前のお皿や新聞を見詰め続けていた。



ふとバルフレアは、読んでいる新聞から目を上げた。

すると、同じようにヴァンがお皿から顔を上げた。

カチンッと視線がぶつかり、お互いの瞳の中で小さな音を立てた。

それは、二人だけに聞こえる幸せの音。

どちらかもともなく笑みがこぼれて、「おはよう」と遅くなった朝の挨拶をした。



〜FIN〜


(2013年3月)




くっついたばかりの二人のイメージ。
若さのあまり暴走しちゃった前夜が恥ずかしい・・・、そんな初々しい二人。

ふと交わした視線で「大好き」って言い合えばいいのデス^^


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ