ラビリンスの篭(DDFF)

□Labyrinth 針穴の回廊
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Labyrinth


【 針穴の回廊 】



今夜の宿は、敵の次元城。
幸い、城の中にはイミテーションはおらず、皆早々に部屋に入った。
そんな中、久しぶりにベッドに寝れるというのに、ヴァンはベッド一面に武器を広げて手入れをしていた。
その光景に、ヴァンと相部屋のラグナは深い溜め息をついた。
「また、えらい広げたな。」
「うん、この間砂漠抜けただろ?あれから銃とボーガンの調子が悪いんだ。」
顔を上げずに返事するヴァンに物足りなさを感じて、ラグナはヴァンのベッドの端に腰掛けた。
「なんだよ、ラグナ。手元が暗くなるじゃんか!」
怒ったように尖らせたヴァンの唇に、思わず邪な感情をいだいてしまい、そんな自分にラグナは嘆息した。

ひょんなことから唇を重ねて、そのままズルズルと身体まで重ね合わせるようになったヴァンとの関係。大人の自分が、まだ年若い少年をたぶらかしのだと、罪悪感を感じている。
だがその一方で、ヴァンとの関係を止めようなどとは少しも思えないから、始末が悪かった。

「ラグナ?」
溜め息をついたまま黙り込んだラグナを、ヴァンは不思議そうに覗き込んだ。
困ったような顔でラグナが見返せば、ヴァンはクスリと可笑しそうに笑った。
「なんだよ。かまってやらなかったから、寂しかったのか?」
「バーカ!誰が・・・」
言い返そうとした言葉は、最後まで言えなかった。残りは、柔らかなヴァンの唇に吸い取られてしまった。
ヴァンの手は武器を放り出して、ラグナの首筋へと回された。その温かな腕のぬくもりに、ラグナはチリリッと背中に甘い痺れが広がるのを感じた。
そして、触れ合うだけの口付けは次第に深くなって、ベッドにちらばった手入れ途中の武器の上に、ヴァンはラグナを押し倒した。
「つ・・・、背中が痛い、ヴァン。」
ラグナは思わず顔をしかめたが、それに構わず、ヴァンは唇を食んだ。
そして、片手をラグナの背中に回すと、下敷きになっているボーガンや、銃や盾を手当たり次第にベッドの下に落としていく。
その賑やかというより、騒音に近い音に、ラグナはまた顔をしかめた。
「ちょ、うるさいって。みんなが起きるだろ?」
のしかかるヴァンの身体を押し返すと、ラグナは呆れたように言った。
「構わないよ。ラグナがベッドから落ちたんだろうって、みんな思うだけさ。」
ヴァンは悪戯っぽく笑って言うと、ラグナの上着に手をかけた。
「なんで、俺だ?寝相が悪いのは、ヴァンの方だろう?」
「だから、オレが蹴っ飛ばしてラグナが落ちたと思うって。」
「なんだよ、それは?」
ラグナは急に脱力して、何もなくなったベッドにどさりと身を沈めた。
ヴァンは、ラグナの上着を脱がす手をとめて、不思議そうに首をかしげた。
「ラグナって普段はいい加減なくせに、意外と細かいこと気にするんだな。」
「普通、するだろ。」
「じゃあ、オレが落ちたってことでもいいけど?」
「そういう事じゃないって!」
「じゃあ、どういうこと?」
きょとんと首を傾げたヴァンに、ラグナは深い溜め息をついた。



ラグナにしてみれば、何故ヴァンが気にならないのか、その方が不思議だった。
男同士。しかも、世界を救おうという旅の最中で―――。
「何をやっているのだ」と責められて当然の行為だ。
そんな背徳的で、後ろめたさが付きまとう関係なのに、呆れるほどヴァンは明るかった。
まるで、好きなお菓子を欲しがるようにキスをねだり、お気に入りのゲームでもするように身体を重ね合う。
そんなヴァンに押し切られるふりをして、ヴァンと逢瀬を重ねる自分は、ズルイ大人だとラグナは自嘲した。



「はげるってさ。」
「は?」
「あんま悩むとはげるって、バッツがスコールに言ってたんだ。」
ヴァンはそう言うと、ラグナの隣にごろりと横になり、その黒髪に顔を埋めた。
「オレ、イヤだな。ラグナがはげたら。だって、ラグナの髪好きだから。」
ラグナの髪を一房手に取って、すりすりと頬に当てるヴァンに、思わずラグナは苦笑した。
「おいおい、髪だけか?俺の好きなとこは。」
柔らかなヴァンの前髪をかき上げてやりながら、ラグナは聞いた。
「んー、他にラグナのいいとこって、何かあったけ?」
悪戯っぽく笑いながら、ヴァンは首をひねった。
「ほんと、お前は失礼な奴だな。」
半分本気で怒ったようにラグナが言えば、ヴァンはクスクスと笑いながら、ラグナに抱きついた。
「エロ親父なとこも好きだよ。」
「なんだよ、それは?オヤジが余計だ。」
「エロはいいのか?」
「あえて否定はしない。今からやることを思えば、否定できないからな。」
苦笑交じりに言うと、ラグナは上着とシャツを脱ぎ捨てて、ヴァンのベストに手をかけた。
「やっぱ、エロ親父だな。」
ヴァンは、ベストから手を抜きながら言った。
「だから、オヤジが余計だ。若いってとこ見せてやる。」
ラグナはそう言うと、ヴァンの肩を押してベッドに組み敷いた。
首にヴァンの温かな腕が回され、ラグナの耳元に、楽しげなヴァンの忍び笑いが響いた。


どうせ悩んだって答えは出ない。
自分に都合の良い答えを探しても、結局見つからないのだ。
先細る選択肢に溜め息をつくのなら、いっそこのまま楽しめばいい。


交わす口付けに、重なる身体の温もりに、ラグナは熱い吐息をつきながら、ヴァンを強く抱き締めた。



〜FIN〜



(2011/7/22)




「あれ?いつの間に?」な二人(^^;)
しかも、ラグナの性格がな〜んか今までと違う・・・
これが、ラビリンスな話ゆえの不思議!ってことで笑って許してくださいね!


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