ラビリンスの篭(DDFF)

□Labyrinth 虚飾の回廊
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Labyrinth


【 虚飾の回廊 】


その日の宿は次元城だった。
敵の城に泊まるなどと、随分胆の据わった選択だったが、ヴァンは事も無げに言った。
「どうせ、野営をしてもイミテーションが出るんだから同じだよ。オレ、たまにはベッドで寝たい!」
そんなヴァンのわがままとも取れる提案が通ったのは、結局、他の皆も暖かい寝床が恋しかったからだ。ヴァンの自由奔放な言動は、慎重な大人組を呆れさせながらも、結果良い方向に転がることが多かった。


そして、城での部屋分けの時のこと。
オニオン・ナイトに同室をきっぱり断られたヴァンは、仕方なさそうにラグナを振り返った。
「しゃーない。ラグナ、行こうぜ。」
「しゃーない――とは何だ。俺にも選択権があると思うけどな?」
「いいから、行くぞ。ラグナ。」
「おい、人の話聞いてるか?ヴァン。」
「置いてくぞー。」
「ちょ、待て!置いて行くな。迷う!」
あたふたとヴァンを追いかけるラグナに、スコールとオニオン・ナイトが溜め息をついた。
ヴァンに追いついた後も、ぶつぶつ文句を言い続けるラグナに、ヴァンは呆れたように言った。
「いつまで言ってんだよ、ラグナ。しつこいぞ。」
「しつこいって、お前は本当に失礼な奴だな。だから、年長者に対する口の利き方が・・・」
「あ、この部屋にしょう!」
ラグナの話など気にも留めずに、ヴァンはさっさと部屋を決めて中に入っていった。
「また、人の話聞いてねぇーし!」
顔をしかめてラグナは、ヴァンの後から部屋に入った。
すると、ヴァンはすでにふかふかのベッドに気持ち良さそうに寝転がっていた。
「あ〜、やっぱベッドはいいなぁ。野営だと、よく眠れないんだよな。」
「な〜に言ってるんだ。」
呆れたように肩をすくめながら、ラグナはヴァンのベッドの傍らに座った。
「いっつも、ヴァンはすぐにグーグー寝てるだろ?寝相の悪いお前に蹴っ飛ばされて、寝れないのは俺の方だ。」
そんなことを言いながらも、ラグナはヴァンが楽なように、足のプロテクターをはずしてやり始めた。
「へへ、楽ちん。」
ヴァンは鼻をこすりながら、笑った。
ラグナは「仕方ねーヤツ」と軽くヴァンの頭を小突いてから、次に手甲をはずすためにヴァンの手を取った。
「二人きりなんて、久しぶりだな。」
ラグナに手を取られたまま、ポツリとヴァンが呟いた。
「しゃーない相手で、すみませんでしたね。」
先ほどのやり取りを思い出して、ラグナは拗ねたように言った。すると、ヴァンはぎゅっとラグナの手を握った。
「本当にそう思ってんの?」
「え?」
目を上げたラグナの前に、悪戯な光を宿した青い瞳が輝いていた。
「最初から、ラグナと二人がいい――なんて、みんなの前で言えないだろ?」
だから、絶対に誘いを断るネギ坊主に声をかけたんだよ、とヴァンはラグナに抱きつきながら笑って言った。


(ああ、本当にこいつは・・・。)
ラグナはその温かな身体を抱き締めながら、溜め息をついた。
子供らしい無邪気な欲求の前には、大人のプライドや意地なんて、只の虚しい飾りにすぎない。ラグナは一抹の敗北感を感じながらも、その一方で、それ以上の愛しさが胸に溢れてくるのを感じた。
「な、オレ頭いいだろ?」
作戦成功と得意そうに言うヴァンに、ラグナは笑って頷いた。
「ああ、悪知恵だけはな。」
そして、たちまち尖った唇に、かりっと噛み付くようなキスをした。


〜FIN〜


(2011/7/1)




あれ?いつの間にか、付き合ってんの?な感じの二人(^^;)

DDFFのヴァンは、やたら男前なセリフが多いですよね。
ラグナに対するつっこみも鋭いし!^^
二人の関係は、ヴァンに振り回されるラグナ―――というのも、アリ!だと思いますv


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