ラビリンスの篭(DDFF)

□Labyrinth はじまりの回廊
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Labyrinth


【 はじまりの回廊 】


聖域に集まった戦士たちが見つめる中、コスモスは静かに宙に舞い上がった。
はっと息を飲む一同。
そして、コスモスの両の手から無数のまばゆい光が放たれた。
その光は、まるで生きているかのように戦士一人一人の元へと飛び散った。
「わあ・・・。」
何人かの歳若き戦士の口から、思わず感嘆の声がもれる。
光は穏かに戦士の周りを舞ったのち、彼らの手の中に納まり消えた。


調和の神コスモスの与えし力――。
それは、まだ使うことのできない神の力。
この力は、戦いを経ることで、戦士の意思となじみ、やがてクリスタルに形を変えるのだという。
ならば、行こう。
グズグズすることはない。
カオスの戦士と戦い、倒し、クリスタルを得て神の力を手にするのだ―――。
戦士達は決意も新たに、一斉に聖域を飛び出して行った。



「いたっ!」
オニオン・ナイトは、突然後からドンとぶつかられ、思わずよろけた。
そして、そのまま転びそうになるところを、ぎゅっと腕をつかまれて難をのがれた。
「大丈夫か?ネギ坊主。」
その声に、オニオンは盛大に舌打ちをした。
「大丈夫だよ。」
ヴァンの手を振りほどきながら、オニオンはそっけなく返事した。
「なんだよ、助けてやったのに。礼くらい言えよ。」
たちまち口を尖らしたヴァンに、オニオンはふんと鼻をならした。
「助けたもなにも、後からヴァンがぶつかったから転びそうになったんじゃないか。こっちが謝ってほしいくらいだよ。」
すると、ヴァンはケラケラと愉快そうに笑って言った。
「わりぃ、わりぃ。お前が小さいから、前にいるの分かんなかったんだ。」
その言葉に、今度はオニオンが口を尖らす。
「自分だって、子供だろ。そんなに大きくないくせに!大人ぶるの止めてくんない?」
だが、ヴァンはちょんちょんと、オニオンの頭の高さを測るようにすると、余裕の笑みを浮かべて言った。
「オレは大人だよ。少なくとも、お前よりは年上だし背も高いし。」
「うっ・・・!」
オニオンは言葉に詰まって、顔を怒りで赤くしながらヴァンを睨んだ。
そんな二人の後ろから、のんびりとした声がかかった。



「な〜に揉めてんの?この俺が解決してやろうか?正真正銘の”大人”の俺が!」
その声に、ヴァンとオニオンの二人は、げっと顔をしかめた。
だが、かまわずラグナはヴァンとオニオンの肩に腕をかけ、二人を引き寄せた。
「で、何が原因だ?またヴァンの不適切発言か?」
大きく頷くオニオンを睨んで、ヴァンはラグナの腕をうるさそうに肩からはずした。
「違うよ。ネギ坊主が小さいから、オレが面倒見てやってただけ。」
「誰が小さいだよ?しかも、面倒見てくれなんて、頼んでないし!」
たちまち噛み付くオニオン・ナイトを、ラグナが「まあまあ」となだめた。
「ほら、ヴァン。前にも口のききかたには、気をつけろって注意しただろう?
小さくても、彼はちゃんとした騎士なんだ。身体の大きさや歳は関係ないぞ。」
珍しく正論のラグナに、オニオンはうんうんと頷く。それを、不満そうにヴァンは見ていたが、何かひらめいたようにポンッと手を打った。
「そうだ!そうだよな、ラグナ。身体の大きさや歳は、確かに関係ない。」
「そうだろ?やっと君にも分かったかい、ヴァン。」
満面の笑みのラグナに、ヴァンも笑顔で答えた。
「うん。分かったよ、ラグナ。だって、オレより背が高くて歳とってるけど、あんたダメダメだもんな。」
「は?」
「そうだよな。確かに関係ないな〜。」
「いや、ちょっと!ヴァン君?」
「仕方ない。ネギ坊主もラグナも、まとめてオレが面倒みてやるよ。」
すると、オニオンが前以上に嫌そうに顔をしかめた。
「げっ!あんなおじさんと一緒?」
「あれ?オニオン君。あんなおじさんて誰のことかな?」
「それだけは勘弁してよ。」
「そう言うなよ。ラグナを一人にできないだろ?迷ってばっかなんだから。」
「なら、僕達二人が面倒見ればいいんじゃない?」
「そうだな、そうするか。」
「うん!」


いつの間にやら、ラグナを面倒見るということでちゃっかり仲直りした二人は、さっさと先を歩いて行く。
後に残されたラグナは、言葉もなく呆然と肩を落とした。
そんなラグナを振り返って、ヴァンとオニオン・ナイトが笑いながら呼んだ。
「お〜い、早くしろよ。置いてくぞ。」
その言葉にラグナは深い溜め息をつくと、のっそりと後を追いかけて走り出した。



〜FIN〜


(2011/6/2)




じゃれる三人組が好きです(*^ ^*)
この中で一番大人なのは、もちろん(?)オニオン・ナイト君でしょうね!


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