秘密の篭(R-18)

□楽園〜入浴〜
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 *この話単独でも読めますが、できれば先に『二の篭』の『楽園』を読むことをお勧めします。




゜*。楽園 〜入浴〜。*゜




ヴァンを抱き抱えて脱衣所に入ったバルフレアは、ヴァンを下ろすと黙って服を脱がせ始めた。
ヴァンは何か言いたげに口を開いたが、バルフレアの目に制せられて、結局何も言わずに下を向いた。
こんな風に久しぶりに二人の時間を持つ時は、バルフレアは必ず自らの手でヴァンを風呂に入れた。ヴァンの服を脱がせながら、傷痕はないか、痩せていないか、何か変わった所はないか丹念に調べた。
「また、こんな所にアザを作って。」
早速バルフレアが、ヴァンの二の腕にアザを見つけると言った。
「ああ、それはオズモーネの野生のチョコボに突かれたんだ。」
いたずらを見つかった子供のように頭をかきながら答えるヴァンに、バルフレアは苦笑しながら丁寧にケアルをかけてアザを消す。
「ありがと。」
口の中で呟くように礼を言うヴァンに目で頷いて、バルフレアは腹帯に手をかけた。ヴァンはさっと頬を赤らめると恥ずかしげに目を伏せた。



自分のことを心配して、毎回身体を検分するバルフレアに、ヴァンは不満がある訳ではない。むしろ、感謝している。
空賊に成り立ての頃、ヴァンの身体にはアザや生傷が絶えなかった。それが、バルフレアに何故そんな傷ができたのか説明する内に、自分の行動の無謀さや力量以上の仕事を受けたことが解るようになった。怪我は勲章などではないと、身にしみて解ったのだ。
その一方で、明るい照明の下でバルフレアの手によって肌を暴かれることの羞恥に、ヴァンはいつまでたっても慣れることができなかった。今やヴァンの身体の中で、バルフレアの指と唇が触れていない所など、一箇所もなかった。



カチャリと帯飾りがはずされて、赤い帯が足元に落とされる。
その上に膝間づくと、バルフレアはヴァンの足のプロテクターを外し始めた。ガチャガチャと無機質の音を、ヴァンは黙って聞いていた。
「今日のモンブランの依頼は何だったんだ?」
少し重い雰囲気を変えるように、バルフレアが尋ねた。
「んっと、オズモーネのLv99のチョコボ狩り。」
「それで、野生のチョコボに腕をつつかれたのか?」
ヴァンを見上げて笑ったバルフレアに、ヴァンも恥ずかしげに笑い返した。
「うん。」
柔らかな雰囲気が浴室に満ちたとき、バルフレアは素早くヴァンの下着ごと下衣を下ろした。さっとヴァンの顔が強張り、小さく息を飲んだ。
そんなヴァンをちらりと見て、バルフレアは機械的に淡々とヴァンの脚を調べた。
「ああ。今回は無茶はしなかったみたいだな。」
足のつま先まで調べて、ようやくバルフレアの長い検分が終った。
バルフレアの手によって一糸纏わぬ裸身にされたヴァンは、恥じらうように前を手で隠して、ホッとしたように息を付いた。
「じゃあ、オレ先に入ってるから。」
やっと放免されて浴室へと消えるヴァンの裸身を見送り、バルフレアは自分の服に手をかけた。


とかく無茶をしがちなヴァンを心配して、諌めるために始めた身体検査だったが、下心がないと言えば嘘になった。
正直、離れている時間が長ければ長いほど、ヴァンの身に何事もなかったか気になった。無論、ヴァンの心変わりを疑う訳ではない。ただ、年々美しく魅力的になるヴァンに、良からぬ了見を起こす者がいないか不安だった。
粗削りの原石のようだったヴァンは、今や誰の目にも鮮やかな光を放ち始めている。万が一、ヴァンの身体に自分ではない誰かの痕でも見つけたりすれば、嫉妬で何をするか自分でもわからない。
嘘を付けないヴァンが、自分に会う約束を破らない以上そんな事は有り得ない。そう頭では解っていながら、バルフレアは毎回念入りに確かめずにはいられなかった。
バルフレアは、先ほどまでヴァンの身体に触れていた自分の手を見た。ヴァンのハリのある肌、しなやかな身体の感触が、今も鮮明に指先に残っている。
その全てが自分だけのものであることに満足して、バルフレアは浴室へと入って行った。




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