四の篭(拍手、イベント)

□2010年 行事文
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七夕用SS

。゜☆゜・。〜〜 星の恋人 〜〜。゜☆・。゜



その話を聞いた時、正直「ふん!」としか思わなかったんだ。
だって、兄さんを亡くしてすぐだったから。
一年に一回だって、会えるならいいじゃないかって。
あの時のオレは、誰かの気持ちになって考えるなんて余裕がなかった。
だけど、今なら     
今なら、一年に一回しか会えない二人のためにオレは泣いてしまうだろうな。
だって、今オレも恋してるから。



その話を聞いた時、正直「馬鹿な奴ら」としか思わなかった。
遊び呆けて、罰を受けて一年に一回しか会えなくなるなんて。
とっとと、逃げ出せばいい。縛られることなんかない。
自分もそう思って、空に逃げ出したからそう思った。
だけど、今なら     
今なら、一年に一回しか会えない二人のためにシュトラールを飛ばしてしまうかもしれない。
なぜなら俺には、お節介焼きで泣き虫の恋人がいるから。



「よお。」
「あ、バルフレア!」
久しぶりにラバナスタのヴァンの部屋を訪ねると、テーブルの上には食べきれない程のご馳走が並んでいた。
「また、随分作ったな。誰かお客か・・・?」
約束もなしに、急に訪ねたバルフレアは、少し当てがはずれた想いで尋ねた。
「あ、うん。そうなんだ。」
ヴァンは、そんなバルフレアの落胆に気付かず、ニコニコと無邪気な笑顔で答えながら、テーブルのセッティングに余念がない。
「そうか。・・・じゃあ、邪魔して悪かったな。」
平静を装って、開けたドアからまた出て行こうとするバルフレア。
「え?え?何、帰るの?」
慌ててヴァンがバルフレアの腕を掴んだ。
「だって、お客が来るんだろ?」
ぷいと、顔をそらして答えたバルフレアに、ヴァンは驚いて目を丸くした。
「何、言ってんの?あんたが、そのお客じゃないか!」
「え・・・?」
今度はバルフレアが驚く番だった。
「俺は、今日来るって言ってないぞ?」
すると、ヴァンはぎゅっとバルフレアに抱きつくと笑って言った。
「だって、今日は七夕だよ。きっと、来てくれるって思ったんだ。」
「ヴァン・・・。」

あの旅の途中。
お互いに知っていた異国の七夕伝説。
ベッドで交わした、悪戯のような寝物語の約束を覚えていたのか   と、くすぐったい気持ちになる。

「俺なら雨が降っても、槍が降っても、必ず会いに行くって言ったろ?あんたは。」
「ああ、そうだったな。」
腕の中のヴァンを抱きしめながら、バルフレアは答えた。
「オレなら雨が降っても、槍が降っても、必ず待ってるって言ったもんな?お前は。」
二人は、お互いに目を見合わせて微笑んだ。

ダウンタウンのヴァンの部屋には、窓がない。
だから七夕だというのに、ここからは今夜の星どころか月さえも見えなかった。
けれど、二人にはお互いの瞳に宿る光さえあれば、それで十分だった。

FIN
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