二の篭(バルヴァン文)

□誰かを想う&LOVEシリーズ
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【 本館ブログ1周年記念SS 】


 ■ My Precious Morning ■



ヴァンは、爽やかな朝の光で目覚めた。
カーテンから差し込む光に、窓の外から聞こえる鳥のさえずり。穏やかな朝に、ヴァンは心地よさを感じて微笑んだ。
ゆっくりと身体を起こそうとして、ヴァンは自分の身体にまわされた腕に気付いた。
トクンと、高鳴る胸。
それは、バルフレアの腕だった。
ヴァンは、そっと視線をその腕に走らせた。柔らかくかけられた腕はたくましく、指はしなやかに長い。
この指が、昨夜自分の身体を巧みに翻弄し、熱く燃え上がせたのだと思うと、ヴァンは恥ずかしさと嬉しさで、頬を赤く染めた。
そして、少しためらいがちにバルフレアの指に自分の指を絡ませた。途端に、指先から幸せが溢れ出すようで、ヴァンの胸は幸せに高鳴った。
クスリと後ろから笑い声がして、絡めた指先が握り返された。抱きしめる腕にも力がこもって、ヴァンの柔らかな髪にバルフレアが顔を寄せた。

「おはよう。良く眠れたか?」

低い艶のある声が耳元に響き、ヴァンは全身が心臓になったかのようにドキドキと胸が高鳴った。

「おはよ。・・眠れたよ。」

身体を縮こまらせて、ヴァンは小さな声で答えた。
その身体を後ろからギュッと抱きしめながら、バルフレアは優しく言った。

「こっちを向けよ、ヴァン。」

すると、ヴァンはますます縮こまって枕に顔を押し付けた。

「やだよ、・・・なんか恥ずかしい。」

くぐもった声がして、金色の髪からのぞく耳が、見る間に赤く染まった。
その様子に、バルフレアはクスリと笑って、更にきつくヴァンの身体を抱きしめた。

「いいから、こっち向けって。キスできないだろ。」

バルフレアの言葉に、ヴァンはびくりと身体を震わす。心臓がトクンと、ひときわ大きく跳ねた。
余りに素直なヴァンの反応に、バルフレアは堪らなくなって赤い耳に軽く噛み付いた。

「わっ?!」

驚いたヴァンが思わず顔を上げると、バルフレアは素早くその顎を捕らえた。そのまま身体の下に手を差し込んで、無理矢理、自分の方に向かせる。

「もう、痛いよ!」

頬を膨らませ顔を赤くして睨むヴァンに、バルフレアは会心の笑みを浮かべた。
「言ったろ?キスができないって。」
その言葉に、ヴァンの顔が赤く熟れる。
気障な言葉を臆面もなく言った男は、楽しそうに笑いながらヴァンの頬を撫でた。

「可愛いな、ヴァン。」

すると、たちまちヴァンは口を尖らせた。

「オレは男だぞ。かわいいって言うなよ。」

そんなヴァンの額に、バルフレアはあやすようなキスを落とした。

「馬鹿。そういうとこが、可愛いんだ。」

そのバルフレアの言葉に顔を赤く染めながらも、ヴァンは頬を膨らませた。
拗ねる年下の恋人を、ギュッと抱きしめると、バルフレアはその暖かい首筋に顔を埋めた。そして、なめらかな肌に軽く歯をたてて囁いた。

「可愛くて堪らないな。食いたくなっちまう。」

その甘い刺激に、ヴァンはくすぐったそうに笑い声をあげた。

「もう、食ってるじゃんか。」

ヴァンの言葉に、バルフレアは肌にたてた歯の力を少し強くした。

「もっと、だ。もっと食いたい。」

ほぉっと、思わずヴァンの口から熱い吐息が漏れた。
昨夜の熱い抱擁が、鮮やかに胸に甦る。
ヴァンは、両の手でバルフレアの頭部を愛しそうに抱きしめて、震える小さな声で言った。

「いいよ、バルフレアなら。オレの全部、食っちゃってもいいよ・・・。」

そんな甘すぎる答えに、バルフレアはクッと喉を鳴らした。

「馬鹿。お前、ほんと可愛いすぎだ。」

そう言って、顔を上げてヴァンを見れば、熱を帯びた空色の瞳がバルフレアに向けられていた。
その熱に引き寄せられて、二人の唇がそっと重なる。
重ねた唇から、触れ合う身体から、愛しい気持ちが溢れ出した。
そんな二人を、朝の光が静かに優しく包んだ。



〜FIN〜


(2011/5/12)


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