鳥檻のセレナーデ
□28幕.饅頭味
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29★ 咎 人
回 SiDE:イヴ 回
アレンと出会ったその日の夜。
久しぶりに、あの夢をみた。
記憶に残る最初の朝。
私が"私"として生まれたあの日。
屋敷で目を覚ました時にみた――夢。
―
――
―――
――――
辺りは何所までも続く暗闇だった。まるで氷の中にいるかのように、冷たい空気。
その中に、私は立っていた。
でも、私は一人ではなかった。
―― 。
私の前に立っているのは、私より少し高い程の淡い光の影。
この世界で由一色を持つソレは、暖かくて、眩しくて、そして……怖かった。
―― 。
その影が、ユラリと揺れる。
まるで何かを告げようとしているみたいに。
でも、私はソレを聞きなくなかった。
何故かは分からないけれど、酷く心が怯えていて。聞きたくないと、耳を塞ぐ。
―― 。
いやだ……。
聞きたくない。
何も知りたくない。
何も知らなくていい。
今はまだ、このままでいたい。
皆を、家族を失いたくない……ッ!
―― 。
初めて目覚めた時、この影だけが支えだった。
初めて記憶を持った時、この光だけが、由一の希望だった。
でも……今は違う。
目の前にいる"者"が怖くてたまらない。私を変えようとする"何か"が恐ろしくてたまらない。
早く……早く、目を覚めして。
一刻も早く、ここから出して。
私を、皆の元に――家族の元に返して。
『 私、兄さんと同じくらいに貴方が大好きよ 』
『 イヴ 』