鳥檻のセレナーデ

□22幕.二重生活
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生存確認_

「ラビが?」

「ああ。俺とイヴ、それにユウの三人で当たっていた任務があったんだ。そっちは無事に終わらせる事もできた」



難なくこなす事ができた……。と言っても、イヴが居てくれたお陰で成功したようなものだったけど。



「その任務の後、俺とユウは別々の任務へと行き、イヴは一人先に教団へと帰る事になってた。で、俺は途中まで同じ列車だったから一緒に帰っていたんさけど……」



列車に揺られる中、一緒に乗っていたファインダーへと本部からの指令が入ってきた。

丁度列車が通過する場所に、別のイノセンスがあるので回収しろ――という指令。俺には別の任務があったから、その指令はイヴへと言い渡された。今ならアクマも居ないので、回収するだけの簡単な任務。
そう聞かされて、俺達もまたそれを疑う事はなかった。――でも。



「それが、イヴの姿を見た最後になった」



今でも、その時の事をはっきりと覚えている。同じ列車に乗り込み、珍しく別行動となったじじいの悪口を言いながら、二人で笑って。
そして、約束した。



『俺の任務地とも近いし、どっちが先に終わるか勝負しね? 負けた方が勝った方のいう事を一つ聞くって事で』

『いいけど、ラビの方はアクマがいるかもしれないでしょ? 私の方が有利じゃない?』

『俺の実力をなめてもらっちゃー困るさ。イヴがたどり着く前に終わらせてやんよ!』

『ほほぅ、言ったねぇ? んじゃ、受けて立とうとも』

『あまりの速さに腰抜かしてやるさ!』

『そしたら子泣き爺みたいにラビの背中にしがみ付いてやる!』

『ぎゃー! じじいはパンダ一人で十分さ!』




そう、笑いあったのに。



「俺が、彼女の元にたどり着いた時には……」



手に入れたイノセンスを抱えて。
彼女の困ったような笑顔を思い浮かべて。
勝った褒美を貰おうと、無意識に笑顔を浮かべて。
辿りついた先で、見たものは――。



『な……ん、だよ……これ』



竹林の中にある小さく開けた場所。
そこに居たのは、彼女ではなくて



「そこは――血の海だった」



赤い、紅い、血の水溜り。



『う、そだろ……なん、で……なんでっ!』



アクマなんか居ない筈だった。敵対する者などこの場には居ない筈だった。――でも、彼女の姿もなかった。

残されたのは赤い水溜りと、その上に落とされた銀のネームボタン。
彼女の名前が書かれた、彼女の血で赤く染まったボタン、だけ。



「結局……イヴの体は何所にも見つからなかった。でも、致死量の血が残されていた事と、破壊されたイヴのゴーレムから摘出された映像で色々と分かったんだ」

「えっ、記録が残ってたんですか?」

「ええ、本当に一瞬……イヴと男の人の後ろ姿だけ、ね」



科学班が必死に拾い集め、真実を知るために、イヴの無事を願って修復した映像。

そこに映っていたのは――左腕から滴り落ちる鮮血。真っ赤に染まった左腕。その肩を庇い、前を睨みつけるイヴと、黒いコートの姿。アクマではなく、人間の男と思われる後ろ姿。

そのワンシーンで色々な事が分かった。
後ろ姿の男が敵という事。イヴが負傷している事。地面に飛散している血はイヴ自身のものであり、そして……殺されたと言う事。


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