鳥檻のセレナーデ

□18幕.ライバルはイーズ?
4ページ/14ページ

19★


ィキ達と分かれてから早1時間。大方車内を探検し終えた私達は、ティキ達の元へと向かっていた。


「そ、そんな事してたんだ」

「うん」


折角だから"白"時のティキの話を聞かせて貰っていたんだけど……なんというか、色々と"あくどい"と言うか、"せこい"というか。
しかも犯罪ギリギリの事ばかりやってるらしい。まぁノアである時点で、犯罪も何もないとは思うけど……。
でも――。


「ほんと、楽しそうに笑ってたなぁ」


仲間達と話をしている時の事を思い出しては、ちょっとだけ複雑な気分になる。
家族に向けるのとは、また別の笑み。本当に楽しそうに、心から笑っているような笑顔。


「私は、どっち、なんだろ……」


小さな苦笑を浮かべては、それよりも小さな言葉が口から零れる。

今までティキは、私にどちらの笑顔を向けてくれていたのだろう。
家族としての笑顔?
仲間としての笑顔?
ティキの笑顔を思い浮かべて見るけど、何故か上手く思い出せなくて。
また、唐突に気が付いてしまう。


――私はティキの事、何も知らない。


何所で生まれ、何所で育り、何を見てきたのか。ティキの好きなモノ、嫌いなモノさえ知らない。
好きな人とか、居る、のかな。恋人とか、大切な人……とか。


「――イヴ?」

「!」


不意に隣から聞こえてきた声に、俯きかけていた顔を上げる。私へと声を掛けたのは言うまでも無くイーズで、その大きな瞳はまるで「大丈夫?」と聞いているかのようだった。


「あ、……ごめん。大丈夫」


笑みを貼り付けた顔を横へと振りつつ、「皆が居る座席を思い出してた」と、言葉を告げる。それも強ち嘘ではないけれど、でも、何故か本当の気持ちを口にする事ができなかった。


――なんだろ、この感じ……。


心中に渦巻くのは、多分、嫌悪と苛立ち。それが何に対してなのかは分からないけれど、凄く嫌な気分で、凄く不安で。まるで――何かに怖がっているような、そんな感覚だった。


「……だーっもう!」


渦巻く感情に嫌気がさしては、声を荒げて自分の頬を叩く。突然の行動にイーズが驚いていたけど、それでも叩いた事で少しだけ気分が晴れた気がした。……ついでにちょっと力を入れすぎたせいで、ほっぺたも"腫れ"てしまったけど。


「心配かけてごめんね。帰ろ!」


そう隣にいるイーズへと笑顔と言葉をかけて、前へと踏み出そうとする。――けれど、動きだすよりも先にドンっと、身体に小さな衝撃が走った。


「あ、すみません」

「すまないである」


直ぐに人とぶつかったのだと理解しては、ペコリと頭を下げる。それはぶつかってしまった人も同じだったらしくて。

 ―ゴチン


「っつ……」

「い、いた……」


後頭部を摩る私に対して、顎を摩る相手の人。つまりその部分が衝突してしまったらしい。情けない音だっただけに、対した痛みは無かった。――のだけれど。


「オイオイ、俺 ら の姫さんに何怪我させてんだよ」

「いや、俺らじゃなくて"俺の"だけどな」

「 俺 ら の姫さんを傷つけた代償きっちり払って貰おうじゃねぇの」

「だから俺らじゃなくて俺のだし。傷つけたって嫌な響きだからやめてくんない?」


そう声をかけてきたのは、言うまでもなくティキ達三人組み。どうやら意外と近くにいたらしい。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ