鳥檻のセレナーデ

□4幕.Dream and Memory
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4★Dream and Memory_


時も同じ夢を見る。最初こそ違う内容の夢。でも、最後は何時も同じ展開になって、何時も――あの人が出てくる、夢。


そこは何所かの街並だった。
僕は何時も、ソコに立っていた。
その外れに教会が聳え立っていた。
僕は何時も、そこを目指していた。
神聖的な建物。でも、何処か違和感を感じるゴシック教会。
僕は何時も、まるで吸い込まれるようにその中に入っていた。そして何時も、中の光景に息を呑んだ。

見上げる程の高い天井。見渡す限りのステンドグラス。中央に位置する主祭壇と、脇のパイプオルガン。

その中に、彼女はいた。大きな天窓から入り込む光の下で、一人空を見上げて歌っていた。

それはまるで、神に祝福されているかのような光景だった。神の寵愛を受け、加護という光を一身に浴びる聖女ホーリー・パーソン

それがあまりにも綺麗で、でも何処か儚げで。直ぐ近くにいるのに、手を伸ばせば届くというのに、僕はいつも、ただその光景を見守っていた。


そんな中、ふと歌が止まる。
背後に居る僕に気がついたように、唐突に歌が止まり。そして――。

そして。
とても優しい眼差しで。
とても愛しいそうな瞳で。
とても嬉しそうに振り返るんだ。

彼女が僕へと振り返り、僕が彼女へと言葉をかけようとした。――そこで、夢は終わる。それこそ唐突に目が覚めて、光の世界は現実という闇へと一変してしまう。

目覚めた後に感じるのは、言い現せない程の哀しみと孤独感。
僕の中に渦巻くのは、どうしようもない寂しさと喪失感。


――君は、誰?


どうして僕の夢に現れるの?
どうして――。



君の顔が思い出せないんだ。




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