鳥檻のセレナーデ
□34幕.過去を知る者
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魚は食っても鯉は食うな_
「ほら、ちゃんと暖まれって」
「だ、大丈夫だからそんなくっつ……っくしゅ!」
一歩間違えれば恐ろしい人身事故から数分。人力車は再び走り出していた。勿論ひき逃げをした訳ではなく、被害にあったスキンをしっかり載せている。
とは言っても流石巨体。……もといノアだけあって頑丈らしく、先程の傷と血の量が嘘のように平然と座席に座っていた。
「オイ、ホームレス! バカイヴにくっつきすぎなんだよ!!」
「仕方ねーじゃん、甘党のせいで狭いんだし」
「甘党じゃない、スキン=ボリックだ!」
「風邪でもひかしたら俺が千年公やロードに怒られるだろ」と、デビットの言葉に返答しつつ、ぎゅうっと背後から私を抱きしめるティキ。
元々人力車は二.三人乗りで、私達三人が乗った時点で満員状態。更にそこに大柄なスキンが乗り込んできたとなれば、当然許容オーバーだった。
そこでまた、「双子なんだから一緒に引け」だの「ホームレスはショッピングカートにでも乗って来い」だの「甘党が飛べ!」「甘党じゃな(略)」だのと大口論へと発展。
その後何がどうしてどうなったのか、私がティキの膝上に座る事で落ち着いた。……ティキが。
彼如く"保護者の特権"らしいけど、明らかに"職権乱用"の間違いだと思う。
「……そういえば、スキンは何で日本にきたの?」
「己が殺し担当のメガネ元帥がこっちに逃げ込んだ」
「ただそれだけの事!」と声を張り上げスキンに、「それって……」と小さく首を傾げる。
「ここにいる皆、失敗してるって事?」
「……俺ら、落ち零れ社員みたいだな」
「それだけのこと!」
「俺はちげーぞ!!」
「ヒヒ! 社長に怒られる! ヒヒ!」
一人だけならまだしも、どうやら四人全員が失敗しているらしい。……となれば、流石の千年公もただではすまないだろう。それこそ「笑顔でいて物凄く怒っている千年公」へと変貌するかもしれない。
――私は任務受け持ってないし、外で待ってようかな、うん。