鳥檻のセレナーデ

□愛のおもさ
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アに新しい家族が加わった。

銀糸の如く煌びやかな白銀の髪。
白く滑らかで陶器のような肌。
ビジョンブラッドを思わせる紅瞳。
まるで穢れを知らない人形、それも西洋人形ビスクドールのような少女。

その少女は、実際に穢れを知らなかった。
人間の浅ましさも愚かさも、愛しさもいじらしさも。

まして、少女は自分自身の事さえ何一つ知らなかった。
今までどうやって生きてきたのか、何処で生まれ、何処で育ち、何を思い抱いていたのかさえ。

新しいノアの一人となった少女事イヴは
、その銀糸と肌のように真っ白で、その幼い外見のように無垢で。
まさに穢れを持たぬ、生まれたばかりのビスクドールだった。








ノアの一員となったビスクドール。
彼女に真っ先に与えられた任務は、新しい"色"へと染まる事だった。

黒、内に渦巻くおぞましさ。
赤、他者へ対する浅ましさ。
藍色、他者を慈しむ心。
桃色、人を想い愛する心。

様々な感情という色。その色に由一染まる事ができるのが、穢れ無き白。無垢だからこそ、好きな色へと染まる事のできる純白。

イヴはまさにその純白――新品そのもののキャンバスだった。様々な色を覚え、染まり、更に他の色を艶やかに吸収していく無地の画布。
そして彼女にとっての筆とパレット――即ち教師こそ、物言わぬ本達なのである。

本自体が言葉を発する訳ではないが、そこに記されている知識は誰よりも古く、そして膨大なのは確かだろう。
更にノアが保持している本は古書から新書、料理本から戦術本まで幅広く揃っている。中には"禁術"についてや、"犬の躾け方"なんて言う本すらあるらしい。
痒い所に手が届く……とまでは行かずとも、日常生活に必要な知識としては十分過ぎていた。

そんな事もあり、数ヶ月。いや、数週間と立たずして、ビスクドールは保護者である男よりも膨大な知識を身に付けていたのだった。――もっとも、少々偏っているのが難点ではあるが。


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