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□一話.本日家族が増えました
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本日家族が増えました。


「……あにー、この子どうしたの?」
私は珍しくバイトが休みで作詞に励んでいたけれど、玄関が騒がしいから階段を駆け降りた。
そこには頭一つ分小さな男の子を抱えた二番目の兄、流。
肩からカバンがずり落ちているものの、男の子を抱えているから直せないのだろう。
無愛想に短く応える。
「…………拾った」
「へぇ、流くんってそんなに優しかったんだぁ」
土曜で仕事が休みの長兄、蘭もリビングから顔を出す。
「うるせぇな、クソ兄貴」
「まぁまぁ二人とも静かに。この子、ボーカロイドだよね」
兄達を宥め、眠っているような男の子を見た。
青年とも少年とも呼べそうな顔つき、右目には眼帯。
「だろうな。たぶんカイト亜種だろ」
廊下を歩きながら言う蘭は楽しそうで。
そりゃあそうだろう。
今までボーカロイドに興味を示さなかった流が、ボロボロのボーカロイドを拾ってきたんだから。
「リビングに連れていこうよ。きれいにしてあげたいし」
「そうだな。俺はタオル取ってくる」
蘭は洗面所に向かい、私は流のカバンを受け取る。
普段からあまり喋らない流は男の子を抱えなおしてリビングに入っていった。
「……お姫さま抱っこ生で見ちゃった」
ニヤけないように気を付けて流に続いた。




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