ナンセンズ小話

□真っ暗くらいしす
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ここは、パルムのとある研究施設。
そこではインヘルト社による亜空間発生実験が行われていた。

研究施設の入り口には原生生物の侵入を監視する為に人間が配置されていた。
配置された人間はとても警護用の人間とは思えない、1人のビーストの少女だった。

「何も来ないのが一番なのですが・・・。」

入り口でツインダガー−ツミキリヒョウリ−を握り締めている少女は、
目の前に見える原生生物を確認しそう呟いた。
3頭のコルトバが少女に迫る。
先頭をガードで防ぎ、残りの2頭に切りかかる。

「はぁっ・・・。」

手に力をいれ、ツミキリヒョウリに強い回転をかけて右、左、とリズミカルに投げる。
回転する刃に身を削られ2頭の体が草原に沈む。
先頭にいたコルトバがくるりと向きを変え、少女に襲いかかる。
少女はブーメランのように手元に戻ってきたツミキリヒョウリを
キャッチすると、そのまま上に放り投げた。
足を軽く曲げ、真上に飛び上がると回転するツミキリヒョウリを蹴り飛ばした。
柄を蹴られたツミキリヒョウリが的確にコルトバの体に刺さる。
着地すると、少女の長い白髪が音もなく舞う。
倒れたコルトバに近づき、刺さったツミキリヒョウリを抜く。
それをナノトランサーにしまうと、少女は辺りを見回した。

「・・・まだ、終わらないのでしょうか。」

先ほどまでの凛とした姿とはうって変わって寂しげな表情になり、
ピンと上を向いていた耳がしゅんと垂れる。垂れた耳にならって、
右耳についていた水色の石のピアスも揺れる。

「彩・・・!」
「!」

後方からの自分の名を呼ぶ声に反応し、耳がまた上を向く。
色白の頬が、ほんのりと桃色に染まる。
ビーストの少女−彩−の名を呼んだ青年は足早に彩に駆け寄る。

「すまない、待たせた。思ったより手間取ってしまった・・・。」
「いえっ、気にしないで下さい。」
「亜空間の出現は安定したのだが、維持がやはり難しいな・・・。
位置演算よりも時系列の演算を・・・。」
「・・・ふふっ。」
「?どうか、したか?」

話をしている最中に笑みを浮かべた彩に青年は疑問符を浮かべた。

「いえ・・・そのっ。」

難しいと言いつつ楽しそうな目が綺麗だった−なんて彩が言えるはずもなく。

「シズルさんは、すごいなぁって思っただけですよ・・・?」

そう言われた青年−シズル−はただ首をかしげるだけだった。
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