ナンセンズ小話

□真っ暗くらいしす
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その時だった。がごん、という音と共にエレベーターが動きを止めた。
エレベーター内の電灯も止まるというおまけつきで。
辺りは一瞬にして暗闇に包まれた。

「きゃぁっ。」
「っ彩!?」

いきなりの事にパニックになった彩がシズルに抱きつく。
シズルはバランスをくずし、必然的に押し倒される形になる。
エレベーターが少し揺れた。

「彩っ・・・大丈夫かい?」
「ぁ・・・ごめっ・・・なさっ。」

暗闇で顔こそ見えないものの、触れている部分から彩の震えが伝わってくる。
上半身を起こし、彩を自らの膝の上に乗せ抱き寄せる。

「シズルっ・・・さんっ!?」
「大丈夫。僕がいる・・・怖くないよ。」

背中を優しくなでると、震えがゆっくり収まっていく。
その時、施設内のスピーカーから放送が流れた。

『ただいま、パルム一帯に停電が発生しました。皆様、
しばらくのご辛抱ご協力お願いいたします。繰り返します・・・。』

「停電・・・か。」
「ごめんなさぃ・・・。」
「ん?」
「私、真っ暗なのが・・・苦手で・・・。」

彩がシズルのコートを小さく握る。
その手にシズルが手を重ねる。

「安心していい、僕がここにいる。」
「はい・・・。」

彩の心音が早くなっていく。
とくん、とくんと互いの心音が重なる。
重なるということはシズルの心音も早くなっているということで。
暗くて顔が見えなくてよかった、と彩は思った。
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