ナンセンズ小話

□真っ暗くらいしす
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カツ・・・コツ・・・。

ぱたぱたぱた。

研究施設内の長い廊下に足音が響く。
シズルの歩幅に合わせて彩の足も速くなった。

カツ、コツ、ぱたぱたぱた。

聞きなれないぱたぱたという足音に、社員からの好奇の目が向けられる。

あの子供は?LWからの警護要員らしいぜ。
あんな小さいのに戦えるのか?あ、俺見たよ。さっきアスターク倒してた。
へぇ、見かけあんなかわいい女の子がねぇ。

ひそひそ、ひそひそ。
ひそひそ、ひそひそ。

彩の耳がしゅんと垂れる。自分の左腕をきつく掴み、何かに耐えるように眉をひそめた。
自然に足取りも重くなっていく。

カツコツ、ぱた・・・ぱた・・・。

先ほどとは違う足音に気づき、シズルが振り返る。

「彩・・・大丈夫かい・・・?」
「あ・・・はぃ・・・平気、ですっ。」
「具合でも悪いのか?」

彩の違和感に気づきそして原因に気づくと、シズルは彩の手を掴み足早に歩き出した。

「シ・・・シズルさんっ・・・?」
「道を変える。多少不便になるが、構わないな?」
「は・・・はぃっ・・・。」

先ほどの廊下とは違って薄暗い廊下にたどり着くと、
そこでシズルはようやく彩の手を離した。

「・・・すまない。社の者には後で僕から言っておく。」
「い・・・いぇっ。大丈夫、ですよっ・・・?」
「嘘はやめた方がいい。君の嘘は、わかりやすい。」
「うゅ・・・。」

廊下を歩いていると、エレベーターの前にたどりついた。

「本来なら移動用区画があるのだが・・・。あそこを通るくらいなら、こっちの方がいい。」

ボタンを押すと、エレベーターはすぐに来た。
彩が乗り、その後に続いてシズルも乗り込んだ。
エレベーターのワイヤーが少しきしんだ。

「古い型だから多少不都合もあるが、問題ないだろう・・・。」

うぃぃ・・・と鈍い音をたててエレベーターが下に動き出した。
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