short 1
□二人の記念日 (青×黄)
1ページ/5ページ
『乾杯。』
重なり合うグラス。キラキラ輝くライト。
小洒落たレストランの一席。
こんな所…、正直初めてだから緊張しちゃう。
ナイフとフォークが上手く使えなくて、カタカタと音を立てる。
すると、向かいからスッと手が伸びてきて、
華麗に羊のソテーを切る。
「あ…りがと…。」
智「いいえ。」
微笑む彼は、まさに王子様。
確かに、俺の王子様なんだけどさ。
量的には、少しずつのコース料理。でも、
俺は、「高い物」が大っ嫌いだ。
羊の肉なんて、気持ち悪いし、何より味付けが濃すぎる。
キャビアの何とかがけとか、何かのマリネ…とか。
だから、ちょっとずつ遠慮しがちに食べていると、
智「嫌…だったかな?」
智さんが、聞いてきた。表情に出ちゃったのかもしれない。
「あ…、いや、そんなつもりじゃ………」
智「ううん。正直に言ってよ。恋人でしょ?」
そんな時、智さんは必ずと言っていいほど「恋人」を強調させる。
確かに、恋人だけど………………………。
本当に、俺の事好きなの?愛してくれてるの?
たまに疑問に思ってしまう。
智さんは優しいし、カッコイイし、超好き。
でも、感情がわからない。何を考えているのかもわからない。
「好き」とか、「愛してるよ」とか、
たまには……言って欲しい。
今日は、一年に一度の「記念日」なんだから。