03/25の日記

20:03
rkrn・くく土井
---------------
桜の花弁がざあっと舞い散る中に見えたのは、去年のあなたの姿。
来年はお前はここを去るけど、いつかまたここでこうして桜を見よう、そう言って笑ったあなたに会うことは結局叶わず、目映く咲いて散り始めた桜と共にこの命が終わろうとしていた。
追手から受けた疵は膿んで熱を孕み、矢に塗られていた毒が身体中に回りかけていた。逃げて逃げて逃げ抜いたら、結果こんな所まで来てしまったけれど、ここはあなたとの思い出がある場所だから、独りで命果てても寂しくはない。

鈍った五感で唯一生きている耳に、草花が揺れるさわさわとした音が届く。開かない瞼の裏側には、春のあたたかな光を感じて、自然と涙が溢れた。
叶うならば、どうかもう一度だけ、あのひとの姿を見たかった。癖のある柔らかな髪に、古傷の残る肩口に、節張っているその指に、腕に、腹に、足に、唇を落とし、この腕に抱きしめたかった。
せんせい。せんせい。
離れていても、ずっと忘れることの出来なかったひと。
この声はもう届かないけれど、もう会うことはないけれど、どうかあなたは幸せに。
瞼に浮かんだ記憶の中の笑顔に願いを込めた瞬間、その意識は途切れた。






************


っていう、卒業翌年に瀕死の目に遭うくくち。
卒業の年に一度だけ土井ちゃんと花を見に来たその桜の木の下で、傷付いた身体を横たえるのがくくちにはとてもよく似合う、なんていう妄想。

このまま息絶えるともれなく私が泣くし、このあと土井ちゃんに拾われて介抱されて続いていくくく土井でも、もれなく私が泣く。

前へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ