07/02の日記
19:49
rkrn・長食満+きり(現パロ和菓子なかざいけシリーズ)
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「ん?…懐かしいなあこれ」
留三郎が、ショーケースの上に置かれた篭の中から小さな包みを掴み上げた。
それは七色の星屑のような菓子。薄水色や山吹色、桃色に乳白色の粒が、ビニールの包みの中で転がる。
レジに出ていたきり丸が、「ああ、金平糖っスか、意外と売れるんスよ、それ」と笑って言う。
食満先輩もおひとついかがっすかあ、と目を輝かせながら売り込むことも忘れない。
その勢いに負けて、留三郎は小袋を一つつまむと、きり丸に渡した。
毎度ありーっ、と威勢よく返事をするきり丸に、それじゃ八百屋か魚屋だろ、と軽く突っ込み笑いあう。
包みを手にして店を出ると、路肩に停めておいた営業車に乗り込み、荷物が乱雑に積まれた助手席に包みを放り投げた。
“中在家先輩が好きみたいなんスよね、これ。意外だけど。”
きり丸が笑いながら呟いた言葉が、頭の中で回っている。
「──そんなの、俺だって知ってんだよ…」
学生の頃、長次の部屋にいつもあった金平糖。
部屋を行き来するようになって、「こんなの好きなのか、意外だな」と問うた覚えがある。
そのとき長次は、優しく笑んで、そうだと教えてくれた。
あれは自分たちの間だけの細やかな秘密だと思っていた所為か、薄靄がかかるような、ざわついた気持ちが拭えない。
同じように、あの後輩に告げたのだろうか。
同じように、あの優しい声色で、自分以外にあの顔を見せたのだろうか。
(──ああ、このムカつきは、)
嫉妬だ、と留三郎は自覚した。
こんな風に嫉妬するのは初めてで、この感情をどう扱ったらいいのかわからない。
(…とりあえず、あそこに行くか、)
きり丸がこっちの店番をしているということは、喫茶の方は店長がやっている筈だ。自分より少し長く生きている彼なら、何か解決策を見出だしてくれるかもしれない。
留三郎は、エンジンをかけると馴染みの喫茶店に向けて車を走らせた。
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現パロの喫茶どい・和菓子なかざいけシリーズよりワンシーン。
食満、きりちゃんにしっとする、の段。
きりちゃんにしっとする食満はかわいいですが、水面下で地味ーに伊作にしっとしている長次もかわいいと思います。
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