06/08の日記

18:36
rkrn・伊留
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「ねえ留三郎。頼みがあるんだけど」

「ことわーる。お前の頼みをきくとロクなことにならん」

「そんなあ。断るにしてもせめて話を聞いてからにしようよお〜」

「ん…まあそれもそうか。で?何だ改まって、頼みなんて。また薬草でも取りに行けって言うのか?」

「ううん。違うよ。……留三郎、僕らはこのまま卒業を迎えて、君は忍になって、まあ僕は残念ながら田舎に帰るわけだけど。もしかしたら。もしかしたら、もう二度と、君には会えないのかも、しれないんだよね。」

「伊作…」

「長い年月の中で、君は僕を忘れてしまうかもしれない。それは寂しいことだけど、忘れてしまっても仕方のないことだと、思ってるんだ。でもね、」


──僕は君を、忘れたくはないんだ。

だから、と言って、伊作は向かい合った留三郎の手を引き、その体を両の腕で包み込んだ。


「ごめんね留三郎。突然こんな…。でも、少しだけこうさせて。」


その声が、優しくこの体を抱きしめるその腕が、少しだけ、ふるえていたから。

留三郎は、そっと自分の腕を伊作の背に回し、掌で軽く擦った。

「伊作。なくなよ、」

そう呟いた留三郎の声も、同じように少しだけ、ふるえていたのかもしれなかった。

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