01/17の日記
20:39
虜・ココマ
---------------
「あの、ココさん…」
「何だい」
「実は、僕ココさんに内緒にしてたことがあるんです」
少しの愛撫のあと、彼は言い淀みながらそう溢した。
内緒の事、って何だろう。実は僕の事なんか好きじゃない、とか、小松くんがもうすぐ死んでしまうとか……もし、万が一にでもそんな内容だったとしたら、僕は僕でいられる気がしない。
そのときは僕のこの手で君を……とここまで思考を巡らせるまでコンマ一秒。相変わらずの自分の思考の暗さに、ある意味呆れてしまう。
けれど、彼が言ったのは、そのどれでもないもので。
「あの………実は、僕、噛み癖が、あるんです…」
それはそれは、まるで一斉一代の大告白のような恥じらいっぷりで、目の前でそれを目にした僕は、つい吹き出してしまった。
「ちょっ!? 何で笑うんですか!僕そんなにおかしいこと言いました!?」
身体の下で僕の胸を叩いてくる彼が可愛らしくて、堪らなくて。僕は、小さな彼を抱きすくめると、耳元で囁いた。
「いや。嬉しいなあと、思って。ねえ、小松くん、」
なら、僕を噛んでよ。
そう告げると、彼は一瞬固まり、恐る恐る訊ねてくる。
「あの…それ本気で言ってます?」
「本気だよ?僕は、君にだったら何をされてもいいんだ。殴られたって、踏まれたっていい」
「いや……流石にそこまではしませんけど」
おっと、これ以上本気を出すと、引いてしまうかな。
僕は苦笑して、抱き締めた身体を離す。
「だから、ね?噛んでみせて、」
大きな瞳を見つめて、満面の笑みを浮かべる。知ってるんだ、君は僕のこの顔に弱いって。
君は目を丸くしたかと思うと、少し伏せて呟く。ああ、僕も、君のその顔に弱い。
「後悔しないでくださいね?」
そうして、彼は僕の左腕を取ると、静かに歯を立てた。がり、という、肉を噛まれる感触に、僕は少し目を細めた。
「──ッ、どうですか?痛いですよね、すみません」
「いいや。君がくれる傷なら、痛くない。寧ろ…物足りないな。…ねえ、次はここ、噛んでよ、」
僕は自分の喉元を指で示す。彼は驚いて、そこは流石に…と躊躇った。僕は彼を再び抱き寄せて、唇がこの首筋に触れるように、顔を手で押さえつけた。
「じゃあ、こっちなら。いいだろう?ねえ、小松くん、」
追い討ちとばかりに、耳に息を吹き掛けてやれば、彼は見事、陥落したようで。
いきますよ、という言葉と共に、首に彼の濡れた歯が当たる。
ああ、もっと。
もっと痕をつけて。
もっと僕に君を刻み付けて。
そんな陶酔する僕を嘲笑うかのように、窓の外から一鳴きするキッスの声が聞こえたような、気がした。
前へ|次へ
□ コメントを書く
□ 日記を書き直す
□ この日記を削除
[戻る]