短編
□会ってしまった彼は
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※同級生学パロ
昼休みのざわざわとした廊下の音を僅かに耳に入れながら、暗い空き教室で床に横たわって、前に自宅からもってきたMy枕に頭を乗せて寝る体勢をとる。それが臨也の昼休みの過ごし方だ。
こんな過ごし方を始めたのはもうずいぶん前であり、最初は確かどこぞの馬鹿に追い掛けられた後に隠れる場所に使った気がする。その内、人が殆どこない場所だと分かったためにめでたく臨也の昼寝場所となったのである。
疲れた時や気が乗らないときは朝から放課後までここにいるときもあるし、先ほども言ったように人が殆ど来ないため、誰にも邪魔されるような心配もなかった。はずだった。
横になってから少しして臨也がうとうとと眠りにつきそうになったときだ。
そろりとドアが開けられる音がして、人の足音が聞こえた。
煩いななどと思いながらも臨也は目を開けられない。此処に来るまでにどこぞの馬鹿野郎と争ったからだ。疲れてるし邪魔しないで欲しいのにと思っていると突如脇腹に衝撃が走った。
「っうぐ、」
「…ぅわあ!」
いったいな!
叫んで目を開けると、傍で転んだ後のような格好をしている男子生徒がいた。
「ご、ごご、ごめんなさい!まさか寝てるなんて思わなくて…!」
慌てたように起き上がって、こちらを向いて頭を下げた生徒を見て臨也は僅かに目を見開いた。
知っている。
この顔はよく知っている。
「…竜ヶ峰、帝人?」
「ぇ?」
口に出して、しまったと臨也は顔を顰めた。彼のことを自分が知っているのはおかしいのに。
取り繕う言葉を探さなければと思案していると、帝人が首を傾げて、ああそうか、と呟いた。
「もしかして正臣にでも聞いた?えっと、折原くん。」
「え?」
「正臣。紀田正臣、同じクラスだよね。」
ああそうだった。彼と紀田正臣は幼馴染みでだから彼もこちらのクラスによく来ていてそれで自分も彼をよく見れる時間が出来たわけで。
「まあ、そんなとこかな。それに君の名前は珍しくて有名だし。」
帝人が少し困ったような顔で君の方が有名だよねと返してくる。臨也はやっとまともな返事が出来たと思ったが、本調子に戻らない。まだ寝呆けているらしい。
「ていうか、なんでこんなとこに?」
先程も言ったようにここは誰も使わないような空き教室だ。彼が此処に来る理由が思いつかず臨也は帝人にそう尋ねると、ああそうだったと顔を顰めた。
「悪いんだけど、理科室ってどこかな。」
「…理科室?」
臨也が疑問の目を向けると、帝人が臨也の隣に腰を下ろして言葉を続けた。
「ちょっと、わかんなくなっちゃって…。」
小さく口籠もりながら呟かれた言葉に、臨也は首を傾ける。彼がさっき言った理科室というのは此処から2階上の真反対の場所に位置するはずだ。理科室なら何度も授業で使ったことがあるし、今更分からなくなるなんてことは―
「もしかして…方向音痴?」
それも極度の。
呟いた臨也の言葉に帝人は恥ずかしそうに頷いた。
――――
続く?